2010/09/30

実践するドラッカー[思考編] / 上田惇生監修・佐藤等編著 1回目



会社の方からお借りして「実践するドラッカー[思考編]」を読みました。


「実践するドラッカー」とは
「マネジメントの父」と称されるピーター・ドラッカーの考え方を「思考編」「行動編」という切り口で編集し、「ドラッカーの言葉」+「解説」というわかりやすい形態に落とし込んだコラム集。「思考編」と「行動編」、それぞれが一冊の本になっています。

私が今回読んだのは、「思考編」の方です。


目次
本書(「思考編」)の目次は次のとおりとなっています。
まえがき
第1章 知識労働者として働く
第2章 成長するために
第3章 貢献なくして成果なし
第4章 強みを活かす
第5章 集中する力

ちなみに、本書と「行動編」をあわせた「実践するドラッカー」シリーズ(?)の全体構成は次のとおりです。


「実践するドラッカー」の全体像
■総論
・われわれはどういう存在か、何を目指すべきか
 ・知識労働者について理解する
 ・成長とは何かを知る
 ・生涯を通して学ぶ

■各論
・考え方
 ・貢献
 ・強み
 ・集中
・行動の仕方
 ・時間管理
 ・意思決定
 ・目標管理
 ・計画


ピックアップ
本書の中からピンと来た部分をピックアップします。この本の良いところを挙げていくとキリがないので、、今回は知識労働者(ナレッジワーカー)と成長に関するところ(1章と2章)からだけ抜粋してみました。

現代社会は組織の社会である。それら組織のすべてにおいて中心的な存在は、筋力ではなく頭脳を用いて仕事をする知識労働者である。
(ドラッカー)
労働者のあるべき姿について語るときにドラッカーが置いている前提。

ドラッカー教授は、知識を成果に結びつける行動を「成果をあげる能力」と呼び、『経営者の条件』で5つ挙げています。
①時間を管理すること
②貢献に焦点を合わせること
③強みを生かすこと
④重要なことに集中すること
⑤成果をあげる意思決定をすること
(解説)
ただの物知りで終わるのではなく、成果を出す人間になるためには、上記の5つのことが必要だとドラッカーは言っています。①はタイムマネジメント、②⑤は持つべきマインド、③④は戦略の重要性について語っています。個人的には、③④がうまくできていない気がします。。選択と集中が効いていません。。

成果をあげることは一つの習慣である。実践的な能力の集積である。実践的な能力は習得することができる。
(ドラッカー)
ドラッカー教授は、「成果をあげる能力」は習得できるといいます。(中略)行動だけを変えることは不可能です。まずは思考を変え、納得したうえで、行動を変える。そのサイクルを繰り返すうちに、頭で考えなくても無意識に行動できるようになります。それが「習慣化」された状態なのです。
(解説)
成果をあげるためには習慣が必要で、習慣は身につけることができるといいます。自分はどんな習慣を身につけられているだろうか、と振り返ってみる必要がありそうです。

ドラッカー教授の名著『現代の経営』にある中世ヨーロッパ時代の逸話を材料に考えましょう。
ある人が工事現場の脇を通りかかり、汗を流して働いている数人の石工に、「何をしているのか」と問いかけました。

一人目の人は、こう答えました。「これで食べていける」と。
二人目は、手を休めずに答えました。「国で一番腕のいい石工の仕事をしている」と。
最後の一人は、目を輝かせて答えました。「教会を建てている」と。

『現代の経営』の逸話はここで終わっていますが、この工事現場の一番奥には、こう答える石工がいました。「この地域の心の拠り所を作っている」と。(中略)働く動機はさまざまです。
(解説)
「目的意識のちがい」の話。この話から学べることは、1)仕事の内容は変わらなくても、目的意識は主体的に「選ぶ」ことができるということ、2)どうせ働くなら、より素敵な目的意識を持った方がいいということ。

知識労働者は自らをマネジメントしなければならない。自らの仕事を業績や貢献に結びつけるべく、すなわち成果をあげるべく自らをマネジメントしなければならない。
(ドラッカー)
知識労働者は、自分で自分を管理・監督するより他はありません。組織に貢献しようと心に決め、自らの手でエンジンに火をつけ、スタートを切ることでしか、成果を手にすることはできません。
セルフマネジメントだけが、知識労働者をマネジメントする唯一の方法なのです。
(解説)
苦手な部分は人にマネジメントしてもらえばいいや、と軽く考えていましたが、、、考えを改めます。自分をモチベートする力、自分を管理する力。

第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。何をしたいかではないことに留意してほしい。
(ドラッカー)
成果をあげるための優先順位を<must-can-will>で考えます。まず「must=なされるべきこと」、次に「can=できること」、最後に「will=やりたいこと」を問うのです。
しかし、「なされるべきこと」は、「できること」に制約されます。ですから、「できること」を着実に増やし、「なされるべきこと」の範囲を広げていかなければなりません。(中略)
もし、「なされるべきこと」と、「できること」「やりたいこと」がまったく異なるのであれば、とるべき行動はただ一つ、その組織を去ることです。能力や意欲の問題ではなく、その組織で求められる貢献の形と合っていなかったということです。
(解説)
何をやればいいのかよくわからなくなったら、、mustとcanとwillに分けて整理して考える、というのが良さそうです……とはいえ、それがなかなか難しくてできないものです。。

自らを成果をあげる存在にできるのは、自らだけである。(中略)人は、自らがもつものでしか仕事はできない。
(ドラッカー)
「成果をあげる存在」になるには、以下の二つを意識する必要があります。
①いまの自分が持っているものを最大限に引き出すこと
②さらに成果をあげるためには何を身につけなければならないかを問い、それを習得すること
そうして仕事に見合う責任を果たせたとき、成果とともに次の成長機会が訪れるのです。
(解説)
自分の成果は自分であげられるようにするのが一番。まさしくそのとおりです。今いまのことだけでなく、未来の成果のことも考えて先行投資することが必要。こちらも、そのとおりだと思います。

真摯さは習得できない。(中略)真摯さはごまかしがきかない。
(ドラッカー)
「真摯さだけは、身につけることができない」。この言葉には、とても緊張させられます。
自己中心的で、組織やともに働く仲間のことをまったく考えない者が組織を破壊する、といった例は理解できます。しかし、真摯さを定義することは、とても難しいことです。
ドラッカー教授は、次の質問をすることで、その者が真摯であるか否かがわかるといいます。
「その者の下で自分の子供を働かせたいと思うか」
また、組織で働く者の真摯さとは、見返りを求めない親や教師の心構えで人に接することに等しいともいいます。
(解説)
人が真摯であるかどうかを見極めるときに使える問い。私自身も「あの人の下で自分の子供を働かせたい」と思ってもらえるような人間になりたいです。

自らの成長のために最も優先すべきは卓越性の追求である。そこから充実と自身が生まれる。能力は、仕事の質を変えるだけでなく人間そのものを変えるがゆえに、重大な意味をもつ。能力なくしては、優れた仕事はありえず、自信もありえず、人としての成長もありえない。
(ドラッカー)
卓越性を追求するプロセスは、三つです。
・卓越性を得る分野や能力を決めること
・それを獲得するために、時間やエネルギー、お金などを集中させること
・卓越性を究めるために自分の強みを徹底的に利用すること
これらを数ヶ月から数年実践していけば、成果とともに少しずつ自信がついてきます。
(解説)
人としての成長には能力とその先にある卓越性が必要だ、とドラッカーは言っています。技術だけではダメだけど、技術を高める姿勢がなかったらそもそもそれ以前にダメ、ということでしょうか。。

10
成長するには、ふさわしい組織でふさわしい仕事につかなければならない。基本は、得るべき所はどこかである。この問いに答えを出すためには、自らがベストを尽くせるのはどのような環境下を知らなければならない。
(ドラッカー)
成長は、仕事を通じた成果とともにあります。したがって私たちは、自らの能力を開発し、最も能力を発揮する、あるいは伸ばすにふさわしい環境を探さなければなりません。つまり、適材適所を自分で行うのです。
それには三つの基準が必要だとドラッカー教授はいいます。
・自らの強み
・仕事の仕方
・価値観
(解説)
……耳が痛いです。自分がもっとも成長でき、貢献できる環境の条件をきちんと認識し、その環境が実現できる場を選ばないといけないということですね。

11
人に教えることほど、勉強になることはない。人の成長の助けとなろうとすることほど自らの成長になることはない。
(ドラッカー)
学びのプロセスを強化するには、アウトプット面を意識すべきです。
第一に、成果を明確にすること。(中略)
第二に、教えること。(中略)
大切なのは、出し惜しみしないことです。すべて出し尽くすと、不思議なことに、空になったスペースに最新の知識や情報がするすると入ってくるのです。(解説)
本を読んだときにも、こうやってブログに書いて初めて気づくこと、わかることがあります。成果につなげるとさらにわかることがあるのだろうと思います。

12
私が13歳のとき、宗教の先生が「何によって憶えられたいかね」と聞いた。(中略)
今日でも私は、いつもこの問い、「何によって憶えられたいか」を自らに問いかけている。
(ドラッカー)
ドラッカー教授が自己刷新の道具として用いた言葉が、少年時代にフリーグラー牧師に教わった「何によって憶えられたいか」です。牧師はその一言を発した後、このように続けました。
「答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生をムダに過ごしたことになるよ」
当時の平均寿命は50歳そこそこですから、要は死の間際にこの問いに答えられるか、ということです。(中略)
では、どうすれば「憶えられる」のでしょうか。
第一に、人とは違う何かをもつこと。違いを生み出すこと。
第二に、違いを生み出すために、日々実践して成果をあげ続けること。人は成果を出している人を記憶にとどめるのです。
第三に、人は他人に影響を与えることで初めて憶えられます。「あの人のおかげで」というとき、長く記憶にとどめられるのです。
(解説)
「何によって憶えられたいか」――これは、組織のなかで多くの他人とともに生きる私たちにとって、究極の問いのひとつです。志の高さや真摯さ、思いやりの強さ、主体性などで憶えられたいものです。。。

ピックアップは以上です。


感想
本書は形としては「本」の体裁になってはいますが、モノとしては「ドラッカーに詳しい人が、ドラッカーの言葉の意味を少しずつ丁寧に解説してくれる」という感じです。馴染みのある言葉と具体例とワークシートを使って、家庭教師をしてもらってるような気分になりました。

読んでよかったです。「行動編」も読みたくなりました。

ドラッカーについては「エッセンシャル版」でも思ったことですが、ドラッカーが言うことは目新しさはないが普遍的で本質的なことだと思います。


こんな人におすすめ
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」や「マネジメント - 基本と原則 エッセンシャル版」などと同じく、「ドラッカーに興味はあるものの、どこから始めたらいいのかわからない……」という方のドラッカー入門に最適だと思います。また、ドラッカーをある程度読んでいる方がそのエッセンスを再確認するためにもおすすめの一冊になっていると思います。

実践するドラッカー【思考編】
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おまけ
ドラッカーって誰?という場合はこちら。
ピーター・ドラッカー - Wikipedia
はじめてのドラッカー - ほぼ日刊イトイ新聞

2010/09/20

20代仕事筋の鍛え方 / 山本真司 2回目

20代仕事筋の鍛え方」をもう一度読みました。1回目はこちら

「40歳からの仕事術」「30歳からの成長戦略」なども書いている(元?)経営コンサルタント山本真司さんの本です。

この本を最初に読んだのは、社会人1年目。人から薦めていただいて読みました。その後も岐路に立つごとに安易な選択をしてしまいがちな自分を戒めるため、読み返しています。良書です。

この本は、目先の利益や他人との比較に捉われそうな私のような人間に
1.成功の定義
2.キャリア初期において大切なこと
を教えてくれます。

以下に、本書の目次、良かった部分のピックアップ、まとめを書いています。


目次
仮想のコンサルタント「山根氏」と仕事に悩む若者3人の交流の物語を通して、20代で鍛えるべき「仕事筋」について読者に語りかける内容になっています。構成は次のとおり。
はじめに
第1章 いまの仕事が将来の成功につながるか
第2章 二十代で鍛えるべきこと
第3章 成功を追いかけると成功は逃げる
第4章 二十年後も成長できるマシン性能をアップせよ!
第5章 極端力を身につけろ!
第6章 努力力を身につけろ!
第7章 学習力を身につけろ!
第8章 受容力で仕事筋をストレッチする
終章  20代の旅立ち


内容的には次のような流れになっています。

■1~3章…問題提起
いまの20代ビジネスパーソンが抱える問題と成功の定義について。

■4章  …問題に対する回答
ビジネス力(ケイパビリティ)の全体像と20代ビジネスパーソンが鍛えるべき力について。

■5~8章…回答の詳細
20代ビジネスパーソンが鍛えるべき力の詳細の説明。


ピックアップ
ぐっときた箇所をピックアップします。

大きな花を咲かせたいんだ。多くの人々の幸せに大きく貢献をし、その時に余人をもって代えがたいとみなされるような。(中略)そしてそのために、ずっと成長し続けていたいんだ。ただそれだけだよ
「キャリア上の最終目標は?」と聞かれた山根の発言。

学習―リターンのプロセスは、学ぶことで、それも自分を成長させる。そしてリターンを見届けて、また学び成長する。そのサイクルを経験するまでは辞めてはいけない
(中略)
ワンサイクルが終わったら、さらに新しいチャレンジがあるかどうかを基準に、その次のキャリアを設計するのが大事だと思うよ。
ひとつの会社に2、3年勤めるだけでは受動的な「学習」から能動的な「リターン」に至る一連のプロセスを経験できない、という話の中で…。

私が、何人もの本当の成功者から学んだのが、『成功者とは永遠に成長を目指し挑戦を続ける人』だということだよ。
これが本書のメインメッセージのひとつ、成功者の定義。

著名企業や大企業の社長だ。彼らを観察していて思うのは、成長を続けているということなんだよ。
最初のサイクルではビジネスパーソンの土台となる力を身につけ、次にビジネススキルを一生懸命勉強し、さらに次に人のマネジメントを覚え、最後に人をどう活かすか、どうやって社会に会社や自分が貢献していくかという課題に挑戦している
「学習―リターンのサイクルを回し続けるキャリア」という話の中で…。耳が痛いです……

お金を追いかけたら行動は短期に偏ってしまいがちだ。(中略)
本当は中長期に鍛えるべき能力を犠牲にすることになる。特に怖いのは、実力を磨くことなく、自分を実力以上に優秀に見せかけるテクニックばっかりに関心がいくことだよ。
(中略)
実力、それも本当の実力が自分の価値を作るんだよ。それは中長期的には、必ず、自分に跳ね返ってくる。せっかくの人生、それも限られた時間しかない人生を、お金を追いかけて無駄にしないで、自分磨きに使ってほしい。
「本質的な力(=実力)を磨け」と言葉を変えて何度も語りかけてくれます。

二十代は、どんな時代に遭遇しても勝てる能力を養うための修行の場を、どこにするかを考えることだと思う。そういう意味では、大間違い以外の業種、会社以外ならどこでもいと思うよ。
どんな場所でもやるべきことは一緒。だから、場所選びばかりしてないで、自分を一番よく磨けると思う場所を見つけて、そこで一生懸命やろう、という話かなと。

若い時でも時間は一番大切な資源だ。その資源をどこに投入するかが大事なんだ。他人に遅れまいと『横に倣え』でみんなの知っていることを勉強しているうちに、自分の時間が少なくなってしまう。それじゃ馬鹿らしいね
自分が目指していないゴールに向かうレースに巻き込まれてはいけない。

四十代の半ばに大きな花を咲かそうとするんだったら、三五歳頃にでもそういう分野を考えて、差別化を狙えば十分間に合う。
OSスキル、アプリケーションスキルは後でもインストールできる。

学習の第1段階:要約して覚える
学習の第3段階:自分の頭で考える
「学習」のあり方について。丸覚えではなく、本当に実務に使えるスキルを身につけるためには、自分の体にしみこませるしかない。そのためには「自分の頭で考える」こと。

自分が、自分の言葉でフィットするように思えるまで、考え抜く
(中略)
勉強するときも、教科書や、ノートをざっと眺めて、それから眼を閉じて頭に残ったことを切り口に、自分の言葉で、『この本は、何を言うために書かれたのかな?』『この先生は何を伝えたいのかな?』『なぜ、そういう結論になるのかな?』ってことを考える。(中略)頭に残った情報を頭で再構成して、自分の言葉でつなぎ合わせて考えてみる。それで、ヒントをつかんで、『こういうメッセージかもしれない』と考えてから、その教科書やノートの大事そうなところを丁寧に読んでみる。
(中略)
この学習法の習得法には3つの条件がある。第一に、徹底した集中だね。(中略)第二に想像力だね。第三に無心の心だよ。
上記の「自分の頭で考える」について。

自分の稼ぐお金や成功って、因果関係で考えるとつらいと思う。いろんな要因の関係で結果が決まる。
(中略)
自分でコントロールできること。これは努力だね。それは成功に向けて十二分にやる。しかし結果は、思いどおりにはならないかもしれない。結果は、素直に受け入れる。そして、その結果の先にある将来は、自然体で流れに身を任せる。努力と達観。
受容力について。


まとめ
僕が今回この本を再読して得た学びをまとめました。



20代ビジネスパーソンが陥りがちな状態とあるべき姿
×他人との比較
×他人の奴隷

○自分の頭で考える

×生き急ぎ症候群
×(お金を追いかける)成功呪縛病
×(ポジショニング)戦略偏執症

○継続的に成長し、挑戦し続ける人生
(↑成功の定義

ビジネス力(ケイパビリティ)の分類
1.アプリケーションスキル
2.OSスキル
3.マシン性能
※PCのアナロジーで

20代で一番鍛えるべき力
「マシン性能」
1.極端力
2.努力力
3.学習力
4.受容力
※主に姿勢や心構え、自学自習の方法について


志を持って仕事をしたいけど、周りが気になったり、短期的に見返りがほしくなったりと近視眼に陥りがちなビジネスパーソンにおすすめです。




おまけ
著者山本さんの公式サイトはこちら。
株式会社山本真司事務所
twitterはこちら。
山本真司 (yamamoto_shinji) on Twitter

2010/09/13

マーケティングリサーチの実践教科書 / 上野啓子


マーケティングリサーチの実践教科書」を読みました。

先日仕事で顧客アンケートをする機会があったのですが、そのときに解釈・提言がうまくできず残念な思いをしました。そこで、マーケティングリサーチ(マーケティング調査)を基礎から勉強しようと思って読みました。

目的
リサーチ力UP。
リサーチの基礎をしっかり身につけること

目次
はじめに~リサーチをめぐる環境の変化
序章  マーケティング・リサーチとは
第1章 リサーチの基本
第2章 リサーチの準備と実査
第3章 リサーチ結果の分析と報告
巻末ケース 歯科クリニックの利用における住民意識リサーチ
おわりに

一言感想

本書を読んだら、マーケティングリサーチの基本的な考え方、全体像をひととおり押さえることができました。良かったと思います。

紹介されているひとつひとつの考え方や手法はすでに知っているものも結構ありましたが、知識を体系化したり全体像を俯瞰したりということができていなかったので、その点で非常に勉強になりました。

本書の良い点のひとつに「平易な言葉でわかりやすく書かれていること」があげられます。さすがモデレータを実務でやられている方が書いたものだという感じがしました。

・・・ちょっと蛇足にはなりますが、この本を読む前に私は、データ分析の数学的テクニックに関する名著「多変量解析のはなし」(大村平さん著)を読んでいました。この「マーケティングリサーチの実践教科書」では数学的テクニックはあまり詳しくは説明されていないので、もしマーケティングリサーチのもうひとつの側面である「データ分析」についても学んでおきたいという方は「多変量解析のはなし」も併せて読まれるとより良いかと思います。

ピックアップ

本書の中で個人的にココ!と思ったところをピックアップします(ちょっと文章・単語を変えているものもあります。。)。

リサーチは何のためにあるのか
・「半信半疑」を「確信」に変える
・「やらない」ことを決める
・「今後のニーズ」をつかむ
・戦略的な意思決定をする

リサーチ結果は発注する各部門にとって役立つ情報である必要があり、それを見て次に何を行えばよいのかが見えるものを提供しなければなりません

マーケティングリサ―チの種類
・実態調査
・コンセプトテスト
・プロダクトテスト
・広告クリエイティブテスト
・認知度・製品評価・顧客満足・ブランドイメージ調査

定量と定性の組み合わせ
リサーチの調査対象が誰かがわかっている場合には、定性調査からスタートします。そうでない場合には定量調査で調査対象を決定する作業が必要です。その後の進め方は、「定性調査で探索し、仮説を立てて」から「定量調査で検証する」というサイクルになります。仮説が棄却された場合には、再度定性調査で探索し、仮説を構築して検証します。このように定性調査と定量調査は補完的に使って循環させます。

リサーチ企画書の概要
1.背景
2.目的
3.項目
4.手法
5.対象者
6.期間
7.見積

調査票作成の基本
・SA(シングルアンサー)なのかMA(マルチプルアンサー)なのかがわかるようにする。
・回答者全員がいずれかの選択肢を選べるようにする。
・質問の意味を明確にする(=捉え方によって意味があいまいになる質問にしない)

曖昧な事柄を定義づけすることを「操作的定義」と言います。「愛用者」という条件であっても、「年間何本以上購入している人を愛用者と定義づける」というように事前に決めておくことが必要

ワーディング
調査票の質問は「明確で」「答えやすく」「中立な表現」を使うように注意

定性調査の意義
・観察し、聴き、発見する
・データしてではなく生活者として理解する
・目の前の人の声・表情・しぐさまでを観察する

定性調査の主な手法
デプスインタビュー(1対1インタビュー)
フォーカスグループインタビュー
エスノグラフィー(観察法)

分析とは
・リサーチの結果として得られた回答(データ)を読み込み、
・それらの示すことを理解し、
・データとデータを統合的に見て、
・ある現象が起こっている背景と要因を解き明かし、
・それらの要因を分類整理するとどんな構造が見えてくるのか
ということを見出し、整理すること

分析において大切なのは、報告書を読むクライアントが「この部分はデータ(事実)」「この部分は分析(リサーチャーの解釈)」と明確に区別できるように記述すること

定量調査分析のステップ
1.単純集計表の読み込み
2.クロス集計表の読み込み
3.追加集計依頼(質問間クロスなど)
4.検定依頼(有意差検定など)
5.グラフ化
6.報告書の流れを決定
7.文章化
8.報告書完成

定性調査分析のステップ
1.再デブリーフィング
2.印象的な発言のマーク
3.一覧表・マップの作成
4.傾向や構造の発見
5.報告書の流れを決定
6.文章化
7.報告書完成

外資系企業のリサーチ報告書の構成
Ⅰ.調査概要(目的・手法・対象者・期間など)
Ⅱ.結果のサマリー
Ⅲ.結果の詳細
Ⅳ.今後の課題と提言
Ⅴ.添付資料(調査票・インタビューガイド・提示物など)

当初の期待値が得られなかった場合、リサーチャーはクライアントに対して改善点をきちんと伝えなくてはなりません。リサーチ結果が望ましくないものであっても、それをあげつらうだけではなく、どうすれば次のステップに行けるのか、具体的な方向性を提言します。

・・・以上です。

おまけ
著者の上野啓子さんの会社HPとブログです。
interVista [インタービスタは、マーケティング・インタビューを軸に商品開発やリニューアルのお手伝いをしている会社です。]
マーケティングDiary


2010/09/12

映画:スーパーの女 / 伊丹十三監督



1996年の映画「スーパーの女」を観ました。


目的ときっかけ
半分はエンターテイメントとして、もう半分は、実店舗における戦略実行の一連のプロセス(環境分析→戦略立案→実行)が描かれたケース資料として。

きっかけは、坂井穣さんの「あたらしい戦略の教科書」で、戦略の理解を深めたい方におすすめの本として紹介されていたのを読んだことです。「あたらしい戦略の教科書」ではこの「スーパーの女」についてこう紹介されています。
種となる小さな戦略が、どのようにして大きな戦略に育っていくのかという点が非常に良く描けている映画です。実際に、「新鮮な食材」によってファイナンスの好循環を生み出していくという大戦略を前面に押し出していくのは、映画の中盤をすぎたあたりからです。
戦略に反対する人々との戦いは、まるで現実の戦略実務を見ているような錯覚すら感じます。



内容
スーパーが大好きなイチ主婦が、幼馴染みが経営するスーパーに社員として参加し経営を立て直す、というストーリーです。

低価格をウリにする新規参入の競合店に対して対抗プランを練り、トラブルを重ねながらもひとつずつ着実に具体策を実行していく流れになっています。笑いの要素も、スカッとしたりハラハラしたりする場面も盛りだくさんで、公開時興業的に成功したというのも肯ける良い映画でした。

数年前に産地や賞味期限の偽装等の企業活動が大きく話題に挙がったので、こういった「企業の裏側」について特に新鮮味は感じませんが、1996年当時にこのことを取り上げて映画にまでしたというのは、、素朴にすごいことです。


ポイント
戦略を学ぶ」という視点で見て、とにかく学びの多い映画でした。実店舗運営における戦略やマーケティングを学んでいる人が見ると倍楽しめる映画かと思います。

スーパーの女に盛り込まれているポイントをいくつか箇条書きしてみます。
環境分析 外部環境分析、内部環境分析
ビジョニング 良いスーパーと自社が目指すビジョンの定義
顧客志向視点
課題の抽出
戦略の立案 シンプルなプランへの落とし込み
戦略の実行
仲間作り、ステークホルダーの特定と説得、トライアル、
顧客と仕入れ元の巻き込み、走りながらのチャンス発見、
オペレーション改善。


ピックアップ
映画中もっとも良かったくだりを。

映画の初めの方の、主人公の花子と経営者五郎の会話です。五郎が「俺はこの商売が面白くない」と言うのに対して、花子が自分の思いを伝えて励ますシーンです。
五郎
はぁ。正直言って、俺はスーパーには向いてないような気がする。やってて何にも面白くない、この商売。

花子
あらぁ、スーパーはいい商売じゃない。(中略)だって面白いじゃない、スーパーって。

五郎
だからどこが面白いんだよ。

花子
(中略)
(ここで言う彼女=スーパーに買い物に来る主婦です)
彼女はまず何をするか。まず、彼女は台所で切れてるものを補充する。だからスーパーの売り場はまず、野菜から始まってるわけだよ。
(中略)
彼女にとっては買い物はドラマなの
(中略)
お前のところの売り場にはこの、主婦を興奮させるドラマがないのよ。いい売り場は主婦に対して話しかけてくるのよ。「奥さん、今日の晩ごはんこれにしましょうよ!」ってね。

「顧客のドラマ(物語)」と「お店のドラマ(物語)」を想像できたら、商売がいかに楽しく、いかにやりがいのあるものになるか、ということを花子は教えてくれます。このような顧客志向こそが「良い顧客志向」だと思います。良い顧客志向とは、顧客を神様に仕立て従業員を奴隷化するようなものではなく、従業員が心の底から楽しみややりがいを感じ、自発的に「顧客のためにもっと何かやりたい、向上したい」と思えるようになるようなものなのでしょう。


おまけ
スーパーの女関連で参考になる資料
スーパーの女 - Wikipedia
スーパーの女 競争の戦略 - 映画で学ぶ経営学


……今回はおなかいっぱいでこれくらいしか書けませんが、とにかく良かった。マーケティングや実店舗経営に関わっている方でまだ観ていない方にぜひおすすめしたい映画です。また時をおいて改めて観てみたいと思います。

2010/09/06

インコのしつけ教室 応用行動分析学でインコと仲良く暮らす / 青木愛弓


インコのしつけ教室―応用行動分析学でインコと仲良く暮らす」を読みました。

心理学の一種である「行動分析学(behavior analysis)」と呼ばれる分野の科学を用いて、合理的・効果的にインコと仲良くなる方法を学べる本です。理論をわかりやすく、そして、実践方法を丁寧に説明してあります。インコと暮らしてる方であれば、今すぐにでも始めたいしつけ方法がたくさん書かれています。

インコと一緒に暮らしてる方が具体的なしつけの方法を学ぶためにも、行動分析学の理論を学びたい方が事例を用いて実践的に学習するためにも使える一冊です。私の家には今インコはいないので、、私の場合はどちらかというと後者の位置づけで。。

行動分析学については詳しくはこちらがよいかと。
行動分析 - Wikipedia


目的
次の2つです。
1.犬と仲良くなれるようになる
2.組織マネジメント力を高める

対象がインコでも犬でも、適切なしつけのアプローチというのはほぼ変わらないみたいなので、この本を選びました。また、近年はこの行動分析学的アプローチをマネジメントの現場に導入しようとする試みもあるみたいですので、そちらの意味での勉強のためにも。


目次
序章
この本の読み方ガイド
1章 3つの箱と4つの法則でインコの気持ちを理解する
2章 ほめ上手になる秘訣教えます!
3章 インコのしつけ7つのルール
4章 どうしてそんなことするの? 理由がわかれば解決できる
5章 ほめてしつける実践編 手に乗る&おいで!
6章 インコはいつでも正しい
用語&対訳
索引
もっと行動分析学を学びたい方のための読書ガイド
あとがき


論理的な構成としては次のようになっています。最初に基礎理論を説明し、それを実践に落とし込む具体的な方法とケーススタディをその後に展開する、という流れです。

理論(原理原則)
→1章 3つの箱と4つの法則でインコの気持ちを理解する

基本(具体的方法)
→2章 ほめ上手になる秘訣教えます
3章 インコのしつけ7つのルール

問題別ケーススタディ
→4章 どうしてそんなことするの? 理由がわかれば解決できる

実践(具体的課題)
→5章 ほめてしつける実践編 手に乗る&おいで!

まとめ(次のステップ提示)
→6章 インコはいつでも正しい


ピックアップ
行動分析学のことを何も知らない状態で読み始めたので、目からウロコのことばかりでした。「複雑なことをシンプルな原則に落とし込む」という科学的アプローチが見事です。以下、学ぶべきところがたくさんありすぎて、ピックアップしまくりました。。。

インコは学習する
しつけの基本は、動物は学習する、ということを認識するところから。
行動の原因を明らかにして、行動に関する法則を見つけるのが行動分析学です。この法則を日常の様々な問題解決に役立てるのが応用行動分析学です。
行動分析学についてわかりやすく説明してあります。
インコは、自分の行動を上手に使って何とかして快適に過ごせるように一生懸命努力しています。だから、インコはどうしてそんなことをするのかな、と考えることが問題解決の第一歩になります。
著者の人柄がうかがわれます。インコが不可解な行動を見せたときに「もう、こんなことして!」と怒るのではなく、「なんでこんなことをするのだろう?どんな理由があるのだろう?」と不思議に思い、考える姿勢、それこそが大事なんですね。
左型の箱は、「どんな時」に行動したかで、中央は「行動(何をした)」、右側は行動の直後に「何が起こった」かを入れました。説明しやすいようにそれぞれ、ABCとこの3つの箱に名前をつけておきましょう。
行動分析学のABC分析(先行条件(Antecedent) - 行動(Behavior) - 結果(Consequense))についての説明。これが行動分析学の核。

行動の直後に起こることが行動の回数を決める!
行動は行動の直後に起こったことに影響を受けます。うれしいことがあらわれたり、いやなことがなくなれば、その行動を繰り返すようになり、いやなことが起こったり、うれしいことがなくなれば、その行動をしなくなります。これが行動の4つの法則です。
これも行動分析学の核。いわゆるオペラント条件付けの拠り所。
「うれしいこと+あらわれる」はヤッター! だから、直前の行動を繰り返す!
「うれしいこと+なくなる」はガーン! だから、直前の行動をしなくなる!
上記の4つの法則のうちの2つ。
「いやなこと+あらわれる」はエー! だから、直前の行動をしなくなる!
「いやなこと+なくなる」はホッ… だから、直前の行動をするようになる!
同じく4つのうちの2つ。
叱るのは難しい
悪いことをしたその瞬間に、その行動をやめさせるだけの大きさの罰を毎回与えなくては、インコはその行動といやなことを結びつけられません。(中略)簡単にいえば、叱っても多くの場合、インコは何で叱れているのかわからず、罰を与える私たちを嫌いになり、噛んだり逃げたりするようになるのです。
これが、行動分析学が教えてくれるもっともすばらしい教えだと思います。倫理的な視点から「怒ったり叱ったりするのはよくない」と言うのではなく、あくまで科学的・合理的に突き詰めて考えると「怒ったり叱ったりするよりもほめることを基本として人や動物に接した方がいい」という結論が出る。

このことを、世のすぐ怒るすべて人たちに知ってほしいです。怒るよりもほめる方がいい。・・・と言いつつ、私も怒ってしまいますが。。。怒るの、やめよう。


・・・以上です。まずは第1章まで。

トゥーリッド・ルーガスさんのカーミングシグナルがまだ途中なので、そちらも読み進めたいと思います。


追記
この本が扱うのはインコを対象とした応用行動分析学でしたが、人間バージョンの本「行動分析学マネジメント」も読みました。こちらもよろしければどうぞ。