2011/10/24

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか? / 枝廣淳子 小田理一郎


なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?」を読みました。

この本は、一冊まるごと「システム思考」と呼ばれる問題解決手法を解説した一冊です。

システム思考関連の本を一冊読みたくて、この本を手に取りました。その「一冊」の条件は
  • システム思考の本質を
  • なるべくわかりやすくシンプルに説明した
  • とにかくわかりやすい一冊
  • そして、ある程度評判もよいもの
だったのですが、結果、この本で良かったと思います。当初の目的「システム思考をおおづかみに理解する」は十分に果たしてくれました。

以下、本書のエッセンスを凝縮し、8文にまとめてみました。


#1 システム思考とは、問題を構造的につかむ問題解決手法

システム思考とは、問題を構造的に捉える、問題解決の手法のひとつです。英語では、Systems Thinking。

問題を解決するときに、問題の理解も浅いままに解決策に飛びついてしまうと、ときに
  • 成果が出ない
  • 短期的に(一見)解決するが、長期的にはさらに問題が深刻化する
  • 思わぬ副作用が出る
といった結果が生じます。このような事態を避けるため、問題をまずは構造的に把握し、一番最適なアプローチポイントにアプローチする。その考え方の枠組みが「システム思考」です。

具体的には次のようなステップを踏む手法になります。
  • 問題をしっかりと明確にしたうえで、
  • 表面化した「現象」だけでなくその背景にある「構造」も把握し、
  • そこからKSFを抽出して、
  • より効果的な打ち手を見つける。

要は、「問題をシステムと捉える」というのがシステム思考の最大の特徴なのですが、じゃあ、「システムと捉える」というのはいったいどういうことなのでしょうか? そのあたりのことを以下で述べていきます。


#2 システム思考の背景にあるキーワード「複雑化」

システム思考の中身を掘り下げる前に。まずはシステム思考の前提に触れてみます。

システム思考の背景には、「ビジネス環境はますます複雑になっている」という時代認識があります。IT革命や経済のグローバル化により、20世紀後半の50年で、世界は大きく複雑化しました。さらに、この複雑化の流れは、今後も止まることがありません。

環境が複雑化するにつれて、ビジネスシーンで直面する「問題」も複雑になってきています。そんな、現代の複雑な問題にアプローチする手法のひとつとして着目されているのが、このシステム思考です。

ちなみに、環境が複雑化していることについて、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏は次のように言っています
現状を把握するということが、不可能に近いくらい難しい。
私は最初この表現を見たとき「大げさだなぁ」と思いましたが、今では「そのとおりだなぁ」(笑)と思います。最優先課題は何なのか、どこに問題の本質があるのか、そして、どこのアプローチをかけるべきなのか。それが本当にわかっている人、特にビジネスパーソンというのは、実は、ごくわずかのように思えます。


#3 システムとは、「作用し合う要素の集まり」

システム思考とは「問題をシステムと捉える」ものだ、と上で述べました。では、ここでいう「システム」とは何なのでしょうか?

ここでの「システム」とは、ITシステムなどの狭義のシステム(人工物)ではなく、「作用し合う要素の集まり」のこと。広義でのシステムを意味します。
システムとは、「複数の要素が情報やモノ、エネルギーなどの流れでつながり、相互に作用し合い、全体として目的や機能を有する集合体」です。

(余談:本書では、この引用文にあるように「全体として目的や機能を有する」というのがシステムの定義に含まれています。しかし、「あらゆるものがシステムだ」という広い見方をするのであれば、「全体としての目的や機能を有する」という部分は必要ないかなと思います。)


#4 システム思考のベースとなる「氷山モデル」

システム思考の一番のベースにあるのが、問題を階層的にとらえる「氷山モデル」です。

「氷山の一角」なんて言葉もありますが、実際、人が「できごと」として認識できるのは世界のごくわずかな部分にすぎません。その背景にあるパターンや関係性は、洞察をすることによって初めて見えてくるものです。この「氷山」という捉え方が、システム思考の大前提となります。

本書で紹介されている「氷山モデル」は4つの階層からなります。
  1. できごと
  2. 時系列パターン
  3. 構造
  4. 意識・無意識の前提
いうなら、表面化したできごと(スナップショット)を時間軸でつなぎあわせることで時系列のパターンが見えてきて、その背景にあるのは因果関係の構造。さらにその下に意識などの前提がある、といったイメージです。

私は、この4階層から「時系列パターン」の部分を外して名前も変えた、次の3層構造の方がわかりやすいです。
  1. 現象
  2. 因果関係
  3. 利得構造

この3層の氷山モデルを図にしてみました。



#5 問題解決のツボ「レバレッジ・ポイント」

問題への対策を決めようとしたときに、アプローチ可能なポイントが複数コ出てくる場合があります。そのときに、数あるポイントのなかでもっとも費用対効果の高いポイントのことを「レバレッジ・ポイント」といいます。

レバレッジ・ポイントは、問題のすぐそばにあるとはかぎりません。一見関係ないように見える遠くのポイントが問題解決の糸口になることもあります。その例としては、「割れ窓理論」として有名なニューヨークの犯罪抑止策なんかがあげられます。

レバレッジ・ポイントは日本語でいうなら「ツボ」のこと。レバレッジ・ポイントが意味する「費用対効果が高い」という面と「必ずしも問題のすぐ近くにはない」といった意味合いが、日本語の「ツボ」という言葉にはこめられています。


#6 最初に使う「時系列変化パターングラフ」

システム思考による問題解決の初期に用いるツールが、「時系列変化パターングラフ」です。英語では、Behavior Over Time (BOT)。


これは、横軸に「時間軸」、縦軸に「KGI」(変えたい対象)をおいた二次元グラフです。このグラフを正しく描くことは、意外とカンタンではありません。正しいグラフを描くには、問題を正しく認識し、目的・目標、時間軸を明確に定めることが必要となります。

時系列パターングラフは他の強力なフレームワークと同様、中学生も使えるぐらいものすごく単純なツールですが、使いこなすのは難しいものです。

時系列パターングラフには、次のようなメリットがあります。
  • 目標を明確にできる
  • 目標達成の時間感覚を持てる
  • モチベーションが上がる
個人で使うときにも有効ですが、特に、チームやグループで使うとき、価値観や利害が異なるメンバーが協調する必要があるときに威力を発揮します。

変化を創り出すためには、そもそも「何をどのように変化させたいのか」、つまり変化のビジョンを明らかにする必要があります
時系列変化パターングラフは、単に理性に働きかけるだけではなく、情緒にも働きかける力をもっているためです。
システム思考を身に付けることで、全体像を見る力、問題構造のツボを見抜く力、(中略)組織内外で問題認識を共有する力を強めることができます。とくに組織にとっては、システム思考は、問題を発見し、関係者で認識を共有することによって、真に効果的な働きかけを作り出す力を与えてくれます。「システム思考は学習する組織の基盤」といわれるゆえんです。


#7 システム思考の核「ループ図」

システム思考の核となるのが、「ループ図」と呼ばれるものです。英語では、causal loop diagram(CLD)。


増減するパラメータをひとつのノードに入れて、パラメータ間の因果関係を矢印として表します。エッジに添えられた「+-」、「正負」といった文字は、因果関係がプラスなのかマイナスなのかを意味します。たとえば、「タマゴの数が増えるとニワトリの数が増える」、つまり、プラスになればプラスになる、という関係は+で表します。逆に、「サメが増えればサカナが減る」(捕食者・被捕食者の関係)という関係は-で表します。使う矢印は一方向のものだけです。双方向矢印は使いません。

これはいわゆる「因果関係図」なのですが、システム思考では
  • ひとつのノードにひとつの「パラメータ」を入れる
  • 結果が原因に影響を及ぼすループ(還流)構造を前提にする
というところがポイントです。これらのポイントを押さえることによって、一般の因果関係図に比べて、よりスムーズに、そしてより共有しやすい形で問題を描写することができます


#8 システム思考の筋力を高めるためには「システム原型」

時系列変化パターングラフと同様、ループ図も原理は非常にシンプルです。しかし、実際に使うとなるとなかなか大変です。描こうと思っても、なかなか手が動きません。。。

その大変なループ図作成作業を助けてくれるのが、「システム原型」と呼ばれるパターン集です。これは、構造としてよくあるループ図をまとめたもので、本書では6つほど紹介されています。

よくあるパターンを知っておくことによって、初めての問題に直面しても、過去の事例からのアナロジーで、ある程度予測を立てて問題を解決することが可能となります。いわゆる、「守破離の守」ですね。

このあたりのライブラリがきちんと整備されているところが、他のフレームワークと比較したときのシステム思考の魅力でもあります。


#9 システム思考の存在を一般に広めた「最強組織の法則」

最後はちょっと余談です。システム思考が一般に広まった「きっかけ」のお話を。

システム思考の研究は1950年頃に始まったそうです。なので、経営や問題解決の領域でいうと比較的歴史の深い領域かなと思うのですが、それが経営の現場で一般に広く知られるようになったのは90年代に入ってからのことのようです。

きっかけは「最強組織の法則」という本。著者はピーター・センゲで、原題は「The Fifth Discipline - The Art & Practice of the Learning Organization(第5の規律:学習する組織の技術と実践)」です。

「最強組織の法則」は要は組織に関する本で、「人がイキイキと働き、成長し、成果も出すようなチームはどうやったら作れるのか?」という疑問を追及した本なのですが、その中で挙げられた「5つの重要なカギ」のひとつに「システム思考」が含まれています。

ちなみに、5つのカギとは
  1. システム思考
  2. 自己マスタリー
  3. メンタル・モデルの克服
  4. 共有ビジョンの構築
  5. チーム学習
の5つです。私はこの最強組織の法則は未読ですが、近々読んでみたいと思います。

・・・以上です。


感想

もともと私は、何かを達成したり、問題を解いてスッキリしたりすることが大好きで、「問題解決」や「戦略」、「発想」の手法を身につけ磨くことを自分のライフワークのひとつと捉えています。その中で、システム思考はこれまでずっとスルーしてきました。

今回本書を読んで、システム思考の基本的な考え方とツールを学ぶことができました。使いこなせるようになるには場数を重ねていくことが必要ですが、これで、systems thinker としての第一歩はこれで踏み出せたのかな、と。よかった。今後磨いていきます。

最後に、目次をあげておきます。

目次
まえがき――小さな力で大きく動かそう!
第1章 システム思考とは何か?――よいパターンを創り出す究極のツール
第2章 システム思考は難しくない!――世の中はシステムだらけです
第3章 最強ツール「時系列変化パターングラフ」で望ましい変化を創り出す
第4章 ループ図を使えば構造が見えてくる!
第5章 強力な助っ人「システム原型」で現実の構造を見破る
第6章 絶妙のツボ「レバレッジ・ポイント」を探せ!――小さな力で大きく変える
第7章 いざ、問題解決へ!――望ましい構造を創りだす
第8章 システム思考の効用と実践手法――こんな場面で役に立つ!
第9章 最強の組織をつくる!――変化の時代に必須のスキル
第10章 システム思考を使いこなすコツ――実践のための七ヶ条 
システム思考をより深く知りたい人のために――システムの特徴

おまけ
システム思考のニュートラルな定義を知りたい場合は、こちら。
Systems thinking - Wikipedia

その他もろもろ。
システム思考 - チェンジ・エージェント
システム思考研究会 - Facebook
システム思考 学習する組織の5つのディスプリン - MIKA KUMAHIRA
Habits of a Systems Thinker - System Thinking in Schools Water Foundation



2011/10/04

世界一やさしい問題解決の授業 / 渡辺健介


世界一やさしい問題解決の授業」を読みました。

この本は、一言でいうと「問題解決技術を子どもたちにも!」な一冊です。

著者はどんな人?
著者は渡辺健介さんという方。イェール大学、マッキンゼー、ハーバードビジネススクールを経て「デルタスタジオ」という会社を立ち上げられた方です(経歴スゴイ)。

目的
問題解決の基本をもう一度おさらいし、技術を高めるために読みました。
(基礎を強化することの大切さを最近身にしみて感じています)

目次
まえがき
1限目 問題解決能力を身につけよう
2限目 問題の原因を見極め、打ち手を考える
3限目 目標を設定し、達成する方法を決める
あとがき
1限目~3限目、という3部構成です。

まず1限目で問題解決の基本プロセスとツールを紹介したあと、2限目でマイナスをゼロにするタイプの問題解決、3限目で「目標達成」というゼロをプラスにするタイプの問題解決が取り上げてあります。


ビジネス書をわかりやすく解説するPersonal MBAにならって、以下、本書のエッセンスを7文にまとめてみました。

#1 問題解決手法とは、問題をうまく解決するための普遍的プロセスとツール群

問題解決の手法とは、「現状の理解」に始まり「実行」に終わる一連のプロセス。プラス、各プロセスで使うツール群のことをさします。

問題解決とは、ひらたくいえば、「現状を正確に理解し」「問題の原因を見極め」「効果的な打ち手まで考え抜き」「実行する」ことです。

#2 問題解決には一定の型がある

問題解決を効果的・効率的に行うためには、解決策やアクションにいきなり飛びついてはいけません。

まずは現状を理解し、そして、問題と原因を突き止め、打ち手を考え、実行する。その基本型に忠実に作業を進めることが、最終的には、より素早くスムーズな問題解決につながります。

そして、原因を特定するときも、打ち手を考えるときも、大切なのは、いきなり答えを出すのではなく「選択肢を洗い出してから取捨選択をする」ということです。この「広げてから絞り込む」というやリ方は、IDEOが提唱するデザイン思考のお話にも出てきます。

It is a series of divergent and convergent steps. During divergence we are creating choices and during convergence we are making choices.
(意訳)
それ(デザイン思考)は拡散と収束からなる一連のステップです。拡散のステップでは選択肢を出し、収束のステップでは選択します。

この「広げてから絞り込む」のときに活躍するのが、後ほど述べる「○○の木」です。

#3 問題解決の型を身につけるといろんな問題に対処しやすくなる

問題解決の型を身につけることで、仕事の問題、生活の問題、古い問題、新しい問題。いろんな問題が解決しやすくなります。

もちろん、問題が必ず解決できるとはかぎりませんが、これを身につけるのとつけないのとでは、アクションの精度が格段に変わってきます。

#4 もっとも便利な型は「○○の木」

問題解決のあらゆる場面で使えるもっとも便利なツールは「木」です。

ものごとを分解するとき、グループを分類するとき、選択肢を出すとき。あらゆるフェーズで木を使うことができます。一般的には「ロジックツリー」「ピラミッドストラクチャ」という言葉が使われることが多いですが、本書では
  • 分解の木
  • はい、いいえの木
  • 仮説の木
と、全部日本語でわかりやすい名前がつけられています。

有名な「マインドマップ」も、構造的にはツリーの一種ですね。

#5 他にもいろんな型

「木」以外にも、問題解決の各フェーズで役に立つ、さまざまなツールが存在します。
  • 課題分析シート
  • 二次元マップ
  • タスクリスト
  • ウォーターフォールチャート
  • プロコンリスト
  • 評価軸×評価リスト

これらを身につけると、身につけた分だけよりスムーズに問題解決を行うことができます。

ただ、これらを全部一気に使えるようにすると大変なので、まずは「木」をきちんと習得して、その後にひとつずつクリアしていくのがよさそうです(私自身も、うまく使えないのがたくさんあります・・・)。

#6 問題解決は自主性の源泉になるからこそ、価値がある

問題解決の手法に価値があるのは、それを身につけると最終、「人生をより自主的に生きられるから」。
「考え抜く技術」、そして「考え抜き、行動する癖」を身につければ、(中略)自ら責任が持てる人生、後悔しない人生を生きることができるようになるのです。
問題解決能力を身につければ、より主体的に生きることができるようになります。多面的に物事を見る力、本質を見極める力、打ち手を具体的な行動に落とし込む力を鍛えることができるからです。

7つの習慣」のひとつめにも挙げられている「主体性をもつ(Be proactive)」のためには、「問題に立ち向かう力」が必要で、そのためには「問題をラクに解く技術」が必要だということでしょう。

#7 問題解決に誤解をしている人はもったいない

世間には、問題解決の手法を身につけるとこんな風になるのではないか、という懸念があります。
  • 頭でっかちになる
  • 創造性をなくす
  • 欧米風の考え方を身につけて日本人らしさを捨てる

しかし、これらは全くの誤解です。

正しい問題解決とは、考えるだけでなく「実行する」というプロセスを含めたものですし、本当に有効な創造性を発揮するためには「現状を理解する」ことが不可欠です。また、問題解決は東西問わず有効な考え方です。

・・・以上です。最後に感想を。


感想
「問題解決の技術」は整理術なんかと同じで、「一見して地味だけど効果が高く応用範囲も広い、超強力なコアスキル」です。

ただ、社会人になればわりと早期に学ぶことができますが、ほとんどの学校では今まだ教えられていません。その存在を知らない子も多いようです。私自身、学部を出て大学院に入るか入らないかぐらいの頃まで問題解決のもの字も知りませんでした。。

人生のあらゆる場面で使えてものすごく便利なので、個人的には「もっと早く知りたかった」の一言に尽きます。ですので、この本のコンセプト「問題解決技術を子どもたちに!」というのに私は大賛成です。

私自身も、問題解決の技術を人に教えられるレベルになるまでバリバリ磨いていきたいと思いました。

こんな方におすすめ

  • 問題解決能力に興味のある子(?)
  • 子どもに問題解決能力を身につけさせてあげたい親御さんや先生
  • 部下や自分以外の誰かに問題解決をわかりやすく教えてあげたい方