2011/12/27

BORN TO RUN 走るために生まれた / クリス・マクドゥーガル


BORN TO RUN 走るために生まれた」を読みました。

副題を直訳すると「隠された部族とスーパーアスリート。世界がいまだかつて見たことのない最高のレース」。副題がそのまんま、物語の要約になっています。

アメリカのランナーの間でブームとなり、昨年日本にも上陸した「フォアフットランニング」とビブラムファイブフィンガーズの火付け役の一冊です。ランナー向け本。

私のランナーの道の師匠からお借りして読みました。

カテゴリとしては「ノンフィクション小説」になるでしょうか。著者のクリス・マクドゥーガルは慢性的な足の痛みに悩んでいたランナーなのですが、彼が「なぜ私の足は痛むのか?」という多くのランナーが抱える素朴な疑問に真剣に取り組みはじめたところからすべては始まります。

「人間にとって、ランニングは不自然で身体に悪いスポーツ」。「ランナーの8割方は故障を経験する。故障はランニングに欠かせないものだ」。そんな、ランナーたちがこれまで受け止めてきた「定説」に対して、著者は「本当にそうなのだろうか?」と問いかけます。「毎年のように、最先端の技術を謳う新しいシューズが登場しているのに、過去30年もの間、なぜランナーの故障はいっこうに減らないのだろう?」。

私もこの問いにはハッとしました。ちょうど私は人生初の足の故障を経験していたときにこの本を読んだため、まさに著者と同じ気持ちで「足が痛む原因は何だろう?」「どうしたらいいんだろう?」と答えを探し求める思いで読みました。

疑問への答えを探し求める中で、著者はさまざまな人たちに出会います。
  • 野望を抱えながら仙人のように暮らす謎のランナー
  • 裸足同然の靴で信じがたいほどの長距離を走るランナー種族「タラウマラ族」(ララムリ族)
  • 人類の起源にまでさかのぼり、「走ること」の本質へと迫るスポーツ研究者
  • サーフィンや詩と同じようにランニングをこよなく愛する大学生
  • 世界最強のトレイルランナー

彼らと出会いながら著者マクドゥーガルは走ることの「真相」へと迫っていき、同時に、「最高のレース開催」を実現していきます。

・・・「走ること」と人類の起源にまつわる最新の科学(仮説)、魅力あふれる個性的なランナーたちの人生の物語、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」「アバター」を彷彿とさせる異文化との交流、と、ひとつの物語の中に複数の要素がちりばめられています。ぶあつくて読み応えはありますが、いろんな楽しみ方ができる「おいしい」一冊です。

ピックアップ
この本の中で特にぐっと来たセリフを3点だけ挙げてみます。

もし本気でララムリ(族)を理解したいなら、95歳の男が山を越えて40キロの道のりを歩いてきた場に居合わせたらよかったんだ。どうしてその老人はそんなことができたかわかるか? 誰からもできないとは言われなかったからだ。老人ホームで死んだほうがいいと言う者はいなかった。人は自分の期待に沿って生きるんだ。
カバーヨ・ブランコ

楽に、軽く、スムーズに、速く、と考えるんだ。まずは“楽に”から。それだけ身につければ、まあ何とかなる。つぎに、“軽く”に取り組む。軽々と走れるように、丘の高さとか、目的地の遠さとかは気にしないことだ。それをしばらく練習して、練習していることを忘れるくらいになったら、今度は“スムーーーズ”だ。最後の項目については心配しなくていい――その3つがそろえば、きっと速くなる。
カバーヨ・ブランコ

これは嘘っぽくて誰にも話したことがないんだけど、ウルトラを走りはじめたのはもっといい人間になるためなの。100マイルを走れたら、禅の境地に達するんじゃないかと思ってた。ものすごいブッダになって、世界に平和と笑顔をもたらすの。わたしの場合はうまくいってない――相変わらずの役立たずだから――けど、自分がなりたい人間に、もっといい、もっと平和な人間になれるって望みはいつもある
ジェン

登場人物のほとんどが、現在も活躍を続ける実在のランナーたちです。

私もこの本のランナーたちのようになりたいし、こんなランナーたちと出会うために、これからも走り続けていきたいなと思いました。


こんな方におすすめ
こんな方におすすめです。
  • ランニング好き、もしくはランニングに興味がある方
  • 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」や「アバター」のタイプの物語が好きな方

「ランニングをもっと楽しみたい」という方や、ランニングを習慣にはしているけど、「ランニングは健康のために仕方なくしていることであって、楽しさなんかまったく感じられない」といった方に特におすすめです。そういう方がこの本を読めば、きっと走ることに対する考え方がガラリと変わる!かと思います。

私の場合は、最新のシューズとウェア、iPodとGPS。これらを使った21世紀型のランニングスタイルがいま最も楽しいランニングのあり方だとずっと思っていましたが、この本を読んでからは、最小限のものだけを持って、サーフィンや座禅、瞑想のときのようなリラックスしたスタイルで走るランニングもありだなと思うようになりました。

逆に、次のような方にはあまり向かないかもしれません。
  • 「ランニングなんてもってのほか」
  • 「ランニングをするぐらいなら他のトレーニングをする」
  • 「ランニングに関してはすでにあらゆることを知っている」

私はこの本を読む前から走ることにはハマっていましたが、この本でさらに走ることが楽しくなりました。私がこれから一生ランニングを続けるようなことがあれば、それはこの本のおかげだと思います。

私が2011年に出会った本の中でも、「最高の一冊」のひとつです。

おまけ
著者のページはこちら。
Christopher McDougall | Born to Run | National Bestseller

こちらは著者のTEDでのスピーチ。

2011/12/13

Head Firstデータ解析 頭とからだで覚えるデータ解析の基本 / Michael Milton


Head Firstデータ解析」を読みました。

内容はもうタイトルそのまんま。いわゆる「データ解析」「データ分析」の本です。

「データ解析」と一言で言ってもそのベースとなる理論はたくさんあるので、それをイチからひとつずつ押さえていくというのはなかなか大変です。この本ではそこのところをギュッとまとめて、データ解析の基本的な考え方から、統計、確率、可視化。そして、線形計画法やヒューリスティック、スプレッドシート上での具体的なデータクリーニングの方法までデータ解析の実務をスムーズに行う上で必要な知識をいいとこ取りでササッと学ばせてくれます

ちなみに、「Head First」というのはシリーズ名。ほかにも「Head First PHP&MySQL」「Head First C#」「Head First Ajax」「Head First HTML5」などなど、プログラミング言語を中心にシリーズ本がたくさん出ています。

シリーズ最大の特徴は「わかりやすさ」。「専門書は堅苦しく、わかりづらいもの」というこれまでの常識を打ち破る、画期的なデザインの本です(分野は異なりますが、この本この本なんかにも似ています)。手法としては、たとえば、目を引く人物の写真や手書き風の吹き出し、話し言葉による話しかけてくるような文章などなど。これらをふんだんに使いながら、それでいて、難しい用語や数式は最小限に抑えて、「集中力をそがれずに楽しく最後まで読めること」に最大限の注意が払われた内容となっています。

私はデータ解析については本書を読む前からある程度の知識と実務経験があるので、今回は、知識の穴を埋めること。そして、わかりやすいと噂に聞いていたHead Firstシリーズが本当にわかりやすいかを確認し、わかりやすく伝えるコツを学ぶことを目的に読みました。

読後の印象として、実際、本当にわかりやすかったです。少しクセはあるので好き嫌いが別れるかもですが、データ分析に強くなりたいマーケター、骨太な解析ができるようになりたいウェブ担当者、データ活用にいまひとつ自信が持てない経営者の方などが読むと、楽しく読めるのかなと思いました(実際に実データを使って解析してみたくなるはず!)。

以下、まとめにいきますが、今回は、あえて本の内容には直接は触れず、Head Firstシリーズに共通の「わかりやすさを高めるための工夫」に焦点をあててみました。

早速、以下から、この本から学んだ「わかりやすさのコツ」を挙げてみます。まずは、「伝える側」にできること6つ。

わかりやすさを高めるために「伝える側」にできること

#1 ビジュアルを使う
・文章だけの説明より、絵や写真を使った説明をする
・モノよりも人物の写真を使う

#2 反復する
・同じことを繰り返し説明する

#3 単体ではなくネットワークで覚えさせる
・同じことをさまざまな表現や素材を使って表現する
・左脳と右脳の両方を使わせる

#4 感情に訴える
・ストーリーで語る
・概念と絵や写真を予想外の方法で使う
・感情豊かに読めるような表現を入れる
・絵や写真に人物を入れる(目線も読者向きで)

#5 主体性を引き出す
・話しかけるような文体を使う
・練習問題を入れる

#6 余計な負担を軽減する
・難しい専門用語などで脳細胞を余計に使わせない

伝える側にできることは以上です。これだけでもおなかいっぱいなぐらい抱負にありますが、もう一方の「学ぶ側」にできることのヒントもたくさん載っています。

わかりやすさを高めるために「学ぶ側」にできること

#1 じっくり読んで脳に深く考えさせる
内容を「知る」「理解する」だけであれば、流し読みでも速読でも大丈夫ですが、その知識を実務で主体的に使えるようにするためには「じっくり」「考える」ことが必要です。

#2 実際に問題を解く
よく言われる表現ですが、陸の上で泳ぎ方をどれだけ学んでも、実際に水に浸かって泳いでみないと泳げるようにはなりません。ケースでもいいので、実際に問題を解いてみることが大事です。

#4 本書を読んだ後寝るまで他の本を読まない
これは目からウロコでした。筋肉がトレーニングの後の超回復によって育つのと同じように、脳にも、本を読んだ後の休息が必要なのかもしれません。寝る直前の気持ちや考えていたことが大事、という話も聞くので、これは実は大事なポイントかも。

#5 声に出して読む
これは昔から言われることですが、大人になるとなかなかやりません。いつもいつもやる必要はありませんが、学習がうまく進まないときには声に出してみるのもひとつですね。

#6 勉強するときのコンディションを整える
生理的、情緒的にストレスの少ない環境で、フローに入れるような環境で勉強することが大切です。水分をたっぷりと摂って脳が活性化する、というのもひとつです。

#7 脳に耳を傾ける
脳が喜んでいるのか、負担を感じているのか。その状態によってわかりやすさは大きく変わってきます。ムリな詰め込みやオーバーワークは禁物です。

#8 豊かな感情を持つ
紙面をただ目で追うだけでなく、面白がったり、驚いたり、笑ったり、突っ込んだりしながら読むことで、脳はより活性化します。

・・・以上です。

伝える側、学ぶ側のどちらに立つにせよ、「わかりやすさ」を高めるために大切なのは、人間の特性――視覚、脳、感情、記憶、学習、集中力、休息に関係するもの――をできるだけ考慮して、それに沿ったスタイルやパーツを使う使うことのようです。実際、作り手の狙いどおりにわかりやすくなっていて驚きました。


一言感想

今回は本書のコンテンツ(「データ解析」)ではなく、スタイル(わかりやすさを高めるためのコツ)に焦点をあてましたが、本書は、データ解析について学ぶのにも、スタイルを学ぶのにも使えるイイ感じの一冊でした。

結構クセはありますが、そこが気にならなければとてもおすすめな本です(ダメな人もいるかと思うので、まずはAmazonのなか見検索などでパラパラっと読んでみるのをおすすめします)。

最後に、目次とキーワードを少し載せておきます。


目次
序章
1章 データ解析入門:分析する
2章 実験:持論を検証する
3章 最適化:最大にする
4章 データの可視化:図を使うと賢くなる
5章 仮説検定:否定する
6章 ベイズ統計:基準を活用する
7章 主観確率:数値で表した信念
8章 経験則:人間らしい解析
9章 ヒストグラム:数値の形状
10章 回帰:予測
11章 誤差:誤差を適切に示す
12章 リレーショナルデータベース:関連付けられますか?
13章 データクリーニング:秩序を与える
付録1 未収録事項:上位10個のトピック
付録2 Rのインストール:Rを起動する!
付録3 Excel分析ツールのインストール:分析ツール

キーワード(自分用メモ)
  • メンタルモデル
  • データ解析の基本ステップ:定義→分解→評価→判断
  • 比較対照
  • 基準となる仮定
  • 不確定要素の特定
  • 交絡因子(confounder)
  • 探索的データ解析(exploratory data analysis:EDA)
  • 回帰分析(regression analysis)
  • 診断性
  • ヒューリスティック

おまけ
英語ですが、Head Firstシリーズの公式ページにはコンセプトも載っています。
About - Head First Labs

2011/12/04

レコーディング・ダイエット 決定版 / 岡田斗司夫


レコーディング・ダイエット決定版」を読みました。

この本のテーマはずばり「レコーディング・ダイエット」! レコーディング・ダイエットとはこの本の著者・岡田斗司夫さんが提唱したダイエット手法で、おととしぐらいに大ブームを巻き起こしました。

この「決定版」は、そのブームがひと段落したころ、レコーディング・ダイエットを実践した著者自身の経過やよくある疑問に対する回答を織り交ぜ、レコーディング・ダイエットを改めて総括することを試みた一冊です。

私は、当時ブームの存在は知っていましたが、「また新たなダイエット手法が出てきたなぁ・・・」ぐらいの認識でスルーしてしまっていました。

が、これ、今読むと、実はものすごい本(手法)でした! というのは、まず、考え方が行動分析学(行動心理学)の理論と絶妙に合致している点。そして、にもかかわらず、理屈っぽくなく平易なことばでわかりやすく書かれている点。ダイエット本として読むのもありですが、私はむしろ行動分析学の応用事例本として読んだ方が楽しめました。

この世には
  • しっかりした理論に裏付けられたアドバイス。ただ、理屈としてはわかるけど、実質、実行できないもの。
  • わかりやすいアドバイス。わかりやすいけど、裏づけが怪しかったり大事な視点が欠如したりしていて、実行しても結局成功しないもの。
この2つのアドバイスはあふれるほどありますが、良いトコ取りをした「理論がしっかりしていて、かつ、わかりやすいもの」というのはごくマレです。そこをしっかり押さえられているのが本書です。

以下、エッセンスをまとめてみます。詳細は本書を読んでいただくとして、ここでは、レコーディング・ダイエットの定義特徴価値という大まかなところ3点を。


#1 レコーディング・ダイエットとは

レコーディングダイエットとは、「レコーディング」とその精度を高めるための「カロリー計算」、この2つを中心とした体系的なダイエットアプローチです。

レコーディングとはそのまま「記録」という意味で、そのときどき体重や食べたもの、摂取カロリーを時系列に記録していくことです。
レコーディング・ダイエットはこういう思考法の集合体だ。けっして「食事記録」や「カロリー制限」が本質ではない。
便宜上「レコーディング・ダイエット」という名前で呼ばれていますが、記録することそのものはこの思考法のほんの一部にすぎません。


#2 数あるダイエット手法のなかでのレコーディング・ダイエットの特徴

では、レコーディング・ダイエットの特徴とは何でしょうか。私なりのポイントは次の3点です。
  1. 感情と本能を重視
  2. プロセス思考
  3. 算数と栄養学

1. 感情と本能を重視
レコーディング・ダイエットでは、いかにラクに、いかにムリなく「ダイエットを続けられるようになるか」というところに最大の焦点をあてています。

要は「意志の力オンリーではなく知恵を使い、無意識も味方につけてダイエットを続けよう。ただし科学の知識も使って」と。その手段のひとつとして「記録」があるのであって、記録がすべてではありません。記録以外にも、ラクに続ける、自分の感情の部分を喜ばせるための工夫がだくさん詰まっています。

問題は「どうやって痩せるか」という方法じゃない。
どうすればダイエットをやめずに続けられるか」という、モチベーション維持が最大のポイントなのだ。
ダイエットとは辛くて我慢が必要な苦行ではない。レコーディング・ダイエットは「面白くてやりがいがあり、もっともお得な自己投資」なのだ。
誰もが間違えるのは、「ダイエットは意志力の問題」だと考えることだ。(中略)
ダイエットは、意志ではなく、知恵で乗り切るのだ
メモをするというのも、自分の無意識にむかって、手紙を書いているようなものだ
「痩せる」というゲームをしてる
要は、「ダイエットって、ほとんどの人が失敗するのは、続けても成功しないんじゃなくて、そもそも続けることができてないからだよね」という問題意識が原点にあります。

このあたり、習慣化全般に共通するところでもあります。

2. プロセス思考
ふたつめの特徴は、プロセス思考です。ダイエットにはいくつものフェーズがあり、フェーズごとに課題はちがうし、フェーズごとにやるべきことは違う。この認識が、レコーディング・ダイエットの大きなポイントです。

また、「体重が順調に変化するときもあれば停滞するときもある、でも、表面上停滞しているからといってダイエットが進行していないわけではない」という大きな視点も、レコーディング・ダイエットはもたらしてくれます。
「レコーディング・ダイエット」は、次のような段階を追って進める。
助走
離陸
上昇
巡航
再加速
軌道到達
月面着陸
月面リゾートでの生活
分りやすいように、飛行機を例にとった言い方にした。飛行機というのはおわかりの通り、巨大でなおかつ重たい乗り物だ。それが空を飛ぶ。浮かび上がるまではには、実はいくつかの段階をふまえている
ダイエットは、すべての値が均等に進むのではなく、また同じペースで減っていくのでもない(中略)
ダイエットは、すべての指標がシンクロして減少するのではない。むしろ、時間差をもって、順番に数値が減少していくのだ。(中略)
体重がなかなか減らないから、停滞期だとがっかりするのは早い。目に見えなくても、身体のなかでは次の段階に進むための準備がすすんでいるのだ。
人間の身体の変化は、一直線で進むものではないのだ。
これは、あらゆる成功への道のりについても言えることです。

3. 算数と栄養学
3つめのポイントが、算数と栄養学。つまり、科学的で客観的なダイエットの捉え方です。ダイエットのキホンは、脂肪のインプット、在庫、アウトプットをきちんと把握することです。つまり、摂取カロリーを計算して、基礎代謝も見積もって、目標状態と現状とのギャップを足し算、引き算の問題として埋めていく作業です。

このあたりのところも、きちんとモレなく押さえられています。
基礎代謝とは何か?
18~29歳の男性1550カロリー、女性1210カロリー
30~49歳の男性1500カロリー、女性1170カロリー
50~69歳の男性1350カロリー、女性1110カロリー

さらに、急激なダイエットが失敗する理由として人間の制御機能「ホメオスタシス」にも触れられています。このあたりもヌカリありません笑。
前にもいったが、1日の摂取カロリーを基礎代謝より低くしないこと。早く痩せたいからといって、1日1000カロリーといった無理をすると、必ず反動がくる。
(中略)人間の身体は、基礎代謝も満たされない状態が続くと、飢餓状態と勘違いして、頭は全身に必死でカロリーを取るよう命令する。そうなると、強烈な食欲がわいてくる。これに抵抗するのは至難の業だ。次には、強烈な脱力感やめまい、吐き気が起こる。
さらに、身体は摂取したカロリーを少しでも蓄えようとする。つまり、身体に脂肪として蓄積しようと、基礎代謝を落としてしまうのだ。


#3 レコーディング・ダイエットの価値

じゃあ、レコーディング・ダイエットをすると何がいいのか。価値という視点でいうと、大きなのは次の3点です。
  1. ラクにダイエットに成功する
  2. 身体に敏感になる
  3. 他にも応用可能な技術が身につく

1. ラクにダイエットに成功する
ダイエットがラクになる。これがレコーディング・ダイエットの一番の価値です。

ダイエットは短期戦ではありません。健康的な痩せ方(シェイプ)を目指すのなら、ダイエットは必ずや長期戦になります。その長期戦を意志の力だけで乗り切ったり、大事なロジックが抜け落ちた片手落ちな手法で突破したりするよりは、レコーディング・ダイエットを取り入れた方が断然よい結果をもたらすかと思います。

2. 身体に敏感になる
自分の身体が求めるもの、身体に必要なものに敏感になれる、というのが2つめの価値です。

人がダイエットをするとき、当面の目的は「適正体重になる」というところだと思いますが、その上位にあるもっと本質的な目的は「健康であること」や「自分の最大パフォーマンスをいつも発揮できるようなコンディション作り」です。

身体に敏感になることは、それらを達成するための必要条件です。「身体からのシグナルに気づく力」はシェイプがよいということ以上に、一生のかけがえのない宝となります。私は、自炊を始めてから、この意味が少しわかるような気がします。

3. 他にも応用可能な技術が身につく
3つめが、他にも応用可能だということ。上述のように、レコーディング・ダイエットは「記録」を中心とした体系的な考え方で、行動分析学の理論にも沿ったものです。このメソッドは他のさまざまな習慣化に応用することができます。

私たちは、ついつい「意志の力で行動を変えよう」と発想してしまう。
でも、実は効果があるのは「環境を変えることにより、行動を変える」ことだ
意志の力ではなく「環境によって行動を変える」。これなんて、まさに行動分析のABC分析ですね。

実は、自己コントロールができることは、体重管理だけに有効なのではない。お金や仕事、人間関係や自分の将来など、広範囲に応用可能である。
レコーディングはあなたという飛行機に、いつも位置や方角や速度を教えてくれる。悩みや迷い、それらから脱出するための計画やヒント、日々の思いをレコーディングすることこそ、人生を計器飛行することである
私自身が、レコーディングで得た成果もある。
いま現在の私の家は、まるでメイドさんがいるようにいつも掃除が行き届いてきれいな状態である。(中略)
いきなり掃除をしたり、きれい好きになろうと決心しても続かない。かわりに私は、自宅の精密な地図を作った。どこになにがあるのか、整理や掃除を我慢して、ひたすら地図を作った。つまりレコーディングしたわけだ。
すると、ゴミ屋敷に見えた自室にあふれていたモノたちが、実は「それなりの理由」で配置されていたことに気がついた。
この段階で、まだ片付けたいのを我慢した。その地図上だけで、再配置をひたすら考えた。(中略)
結果、部屋は劇的に片付いた。片付くどころか、掃除するのが当たり前になった。

空間やタスクの整理にも、レコーディング、無意識の活用という手法は使える、とのこと。このあたりの部分も取り入れていきたいです。


・・・以上です。示唆に富んだところが非常に多く、すべてを挙げ出すとキリがないくらいなので、このぐらいで。


一言感想

面白かったです。

読んでいる間、感動しっぱなしでした。長い年月をかけて発展してきた行動分析学の考え方と合致しているし、ダイエットを経験した人だからこそわかるジレンマ(インサイト)にもきちんと焦点があてられていて、ひとつひとつ納得しながら読むことができました。

個人的に思うのは、この考え方がブームで終わらず21世紀の定番へと変わってほしいなぁということ。

今は少しマシになったのかなとも思いますが、ものごとがうまく行かない場合に「がんばりが足りない」「意欲が足りない」とすぐに意志の問題だけに帰着させてしまう「意志の問題病」がこの世には蔓延しています。

実は、ちょっとのカガクとちょっとしたツールで、「苦しい努力」が「ハッピーな努力」に変わる場面はたくさんあると思います。レコーディング・ダイエットや行動分析学はそのひとつで、「意志の問題」だけで片づける狭いものの見方を拡げて、もっと大きな視点から世界を捉え直すことを可能にしてくれるものです。

類書の「脳が教える!1つの習慣」もおすすめです。「レコーディング・ダイエット」はダイエットがテーマですが、「脳が教えるたったひとつの習慣」は習慣全般をテーマにしていて、考え方は共通です。


最後に目次も。

目次
序章  レコーディング・ダイエットの世界へようこそ
第1章 助走期 「現実」を知る
第2章 離陸期 カロリー計算なんて怖くない
第3章 上昇期 目標値を決めて、食べ方を工夫しよう
第4章 巡航期 「75日目の反乱」をどう抑え込むか?
第5章 再加速期 胃袋からのサインを聞く
第6章 軌道到達期 ダイエットを意識しない
第7章 月面着陸期 「新たな自分」に生まれ変わる
終章  月面リゾートでの生活
あとがき


おまけ
著者の岡田斗司夫さんの公式サイトはこちら。
岡田斗司夫公式ウェブサイト
レコーディング・ダイエット2.0のススメ(更新停止中)
レコーディング・ダイエット以外の幅広い活動のようすも見ることができます。



ちなみにこちらはレコーディング・ダイエットブームの発端となった一冊です。