2012/12/22

ブログタイトルを変えました その2

2013年を迎えるにあたり、ブログのタイトルを変えることにしました。

今度のタイトルは「BOOKS ON LIFE」です。

このブログのタイトルは1年半ほど前にも1度変えたことがあって、「コロコロと何度も変えるのもどうかな・・・」とも思うのですが、実情、ここで取り上げたい本のタイプなんかも少しずつ変わってきたので、「実状により則したものを」と思い、変えることにしました。

早いもので、2012年もあと少しで終わりですねー。毎年思いますが、1年52週、あっ!という間です。。。

1月から順に思い返すと本当にいろんなことがあったということもそれはそれで思うわけですが、それでも、あっという間だった気がします。年を重ねるごとに、1年の重みと人生の短さが、より強く感じられてくる今日この頃です。

このブログにおいては、2012年は中小企業診断士の勉強に時間をかけていたということもあり、去年と比べると投稿の数がぐんと減ることになりました。その点、2013年以降はもう少し余裕が生まれてくるかなと思うので、なるべく厳選しながらも、より多くの本を取り上げていければと思います。

2013年も良い出会いがありますことを。

2012/12/13

フロー体験入門 / ミハイ・チクセントミハイ


フロー体験入門」を読みました。

副題は「楽しみと創造の心理学」。原題は「FINDING FLOW」。

名前が呪文っぽい心理学者 ミハイ・チクセントミハイ が1997年に書いた本で、日本語訳は2010年初版。とかなり最近ですが、著者の著作の中での位置づけとしては「フロー体験とグッドビジネス」「スポーツを楽しむ」よりも前の本になります。

まさにタイトルのとおり「フロー入門」な一冊。フローに興味をもった人が最初に取りかかる一冊としては、この本、あるいは「フロー体験 喜びの現象学」がよいかと思います。

ちなみに、著者のフロー関連本を出版された順にまとめてみるとこんな感じです。
  • Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play 1975
  • The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self 1981
  • Optimal Experience: Psychological studies of flow in consciousness 1988
  • Flow: The Psychology of Optimal Experience 1990
  • The Evolving Self 1994
  • Creativity: Flow and the Psychology of Discovery and Invention 1996
  • Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life 1997
  • Flow in Sports: The keys of optimal experiences and performances 1999
  • Good Work: When Excellence and Ethics Meet 2002
  • Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning 2002

このうち、邦訳されていて現在手に入るものとしてはこのあたりです。
  • Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play
    楽しみの社会学
  • The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self
    モノの意味
  • Flow: The Psychology of Optimal Experience
    フロー体験 喜びの現象学
  • Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life
    フロー体験入門
  • Flow in Sports: The keys of optimal experiences and performances
    スポーツを楽しむ フロー理論からのアプローチ
  • Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning
    フロー体験とグッドビジネス

ちなみに、「フロー体験入門」と「フロー体験 喜びの現象学」の2冊を「基本編」とするなら、「フロー体験とグッドビジネス」や「スポーツを楽しむ」なんかは「応用編」といった位置づけです。もしこのあたりを読むなら、基本編を読んだあとがよいかなと。

ただ、本書も日本語タイトルで「入門」とはいっても、著者のいつものパターンに違わず、ボリューム満載です笑。。。「上澄みだけちょっと勉強しようかな」なんて軽い気持ちで読み始めると、内容が濃密で、でもおもしろいので、斜め読みできなくて後悔します笑

「フローについてサクッと知りたい」という場合は、間違いなく、ミハイ・チクセントミハイの本よりはWikipediaのページを見るのがよいかと思います。日本語と英語とで充実度が結構ちがうので、できれば、英語OKの方は英語の方を・・・
フロー - Wikipedia (日本語)
Flow(psychology) - Wikipedia (英語)


タイトルの「フロー」(flow)というのは、ひとことでいえば

目の前のタスクに極度に集中し、没頭した状態

のこと。

スポーツや何か単純な作業に打ち込んでいるとき、ふと気づけば、感覚が普段と変わり時間の感じ方が極度に遅くなったり速くなったりしていた――そんな経験が誰しもあるかと思います。

私も、子どもの頃は、遊びやテレビゲーム、パズル、漢字や計算のドリル、書道、部活などなど。大人になってからは、デスクワーク、ジョギング、ボルダリングなどなど、そういった経験の「素」ともいえるようなものがいくつかあります。

そんな「夢中になった」心の状態を「フロー」という名前で概念化し、心理学として最初に研究し始めたのがこのミハイ・チクセントミハイです。

ミハイ・チクセントミハイが言うところでは、「明確な目標」「すばやいフィードバック」などフローの特徴として7~8つのポイントが挙げられていますが、その中でも特に有名なのは「スキル」レベルと「挑戦」レベル、心理的状態との関係を表す次のフレームワークでしょう(フロー理論の中でここだけが切り取られて部分的に有名になりすぎているきらいはあります・・・ このあたり、「背景情報なしで一部だけ切り取られて濫用されている」という意味ではマズローの「欲求階層説」なんかと似ていますね。)。


この図は本書にも載っていますが、各ポイントの日本語は私訳です。オリジナルの図は英語のWikipediaに載っていますのでよろしければそちらを。

いわく、フローというのは「スキルと挑戦のレベルのバランスがよくともに高い状態」で起こりやすい、とのこと。スキルは高いけど挑戦のレベルが低い領域ではフローというよりは「リラックス」しやすいし、逆に、スキルが低くて挑戦のレベルが高い領域では「強い不安」だけがあってフローを感じることはなかなかできません。

日本語に「やりがい」という言葉がありますが、これはちょうど、自分の能力が活かせて、かつ、ほどよい難易度のタスクに取り組んでいるときに生まれやすいかと思うので、ちょうどこの「フロー」の領域と一致しているかと思います。

もちろん、ときにこういう心的状態に人が「入る」ということは、遠く昔から認識されてきました。また、心理学の領域でも「人はどんなときに最も幸せを感じるのか」という問いへの答えを巡ってこういう状態への言及は彼以前にも多くなされてきたようです。

その意味で、ミハイ・チクセントミハイはフローの「発見者」ではありません。そのことは彼自身明確に認めています。

それでも彼がすごいのは、この一見つかみどころがなく研究の対象にしえない「フロー」という心的状態の研究を、調査や思索などあらゆる方法を駆使してそのキャリア全体にわたり取り組み続けてきたことです。これはまさにコロンブスの卵的取り組みだったと思います。

現代の日本で生きているかぎり、もはや、経済面や健康面で得られる豊かさには伸びしろの限界が見えてきています。だけど、フローがもたらすやりがい、さらには、フローが生活の中に組み込まれていることによる喜びという意味での伸びしろは、私たちの生活には大きく残されているように思います。

調査結果ありーの、ひたすら考えた思考の痕跡ありーので、頭が活性化されるおもしろい本でした。

目次
目次はこのようになっています。
第1章 日々の生活を構成しているもの
第2章 体験の内容
第3章 さまざまな体験をどう感じているか
第4章 仕事についての矛盾
第5章 レジャーの危機と機会
第6章 人間関係と生活の質
第7章 生活のパターンを変えよう
第8章 自己目的的パーソナリティー
第9章 運命愛


今回は、全体的にピックアップしたいところばかりなのでピックアップはなしで。


・・・去年ポジティブ心理学に出会って、その次の展開として2012年はミハイ・チクセントミハイの本をいくつか読んできました(ポジティブ心理学を提唱者のひとりなのでそのつながりで・・・)。彼の本はいずれも、読んでいて楽しく、読み応えもあり、また、活かす気さえあれば読後も仕事・プライベート問わず大きな影響を与えてくれる(たとえばラクをしながら成長することができるようになる)よい本かと思います(あくまでも、自分で実践する必要がありますが)。

私が年を取ったときには「若い頃生き方に影響を受けた本」としてこのミハイ・チクセントミハイの本を必ず挙げるだろうと思います。それぐらい、いま、影響を受けています。実践という意味ではまだまだですが、これからも続けていきたいと思います。

最近よく考えることですが、この大量消費・情報過多の社会において、外界から煽られて「刷り込まれた欲求」に支配されるのではなく、また逆に、時代の濁流から距離を置いた前近代的な生活の中に閉じこもってしまうのでもなく、自分を確立しながら自分なりのほどよいバランスを見つけて生きていく。そういうのは、口ではカンタンでも、実践するのはなかなかカンタンではありません。

ただ、それが比較的やりやすい、可能性が高いという意味で、実は、日本というのは世界でも特に恵まれた土地だと思います。ほかのどの国がどうというのはありませんが、ここ日本では、自分で目を開きさえすれば選択肢は多く、人や文化の多様性にも実は寛容かなと思います

ただ、可能性としては大きくても、実際に多くの人がその可能性を活かせているかというとあまりそうでもない気がします。

そのあたりの可能性に目を開き、一回きりの自分の人生をよりよくする。それは一人ひとりの人間が自分でやるしか、他の人にかわりにやってもらうことはできないかと思います。この面で、この本は多くの人に刺激と手がかりを与えてくれる良書かと思います。


おまけ
著者のスピーチもTEDにあるので、よろしければ。



2012/11/21

仏教と脳科学 / アルボムッレ・スマナサーラ 有田秀穂


仏教と脳科学」を読みました。

副題は「うつ病治療・セロトニンから呼吸法・座禅、瞑想・解脱まで」。内容には沿っていますが、ややSEO的な副題です笑。

この本は、お坊さんと科学者とが1対1で行ったある対談の記録です。

お坊さんの名前はアルボムッレ・スマナサーラさん(音読できません)。スリランカ初期仏教の長老を務めた方で、しかも、日本語がしゃべれてかつ駒沢大学大学院博士課程まで卒業している、いわゆる(?)バイリンガルPh.Dハイパーモンク。

ちょうど先日、TeDxでプレゼン(法話かな)をされていました。止まった写真からイメージできるよりもずっとかわいくて親しみを感じるしゃべり方をされる方です。話を聞いているだけで癒されます。


一方の脳科学者は有田秀穂さん。脳内物質「セロトニン」をテーマとした著書も多く、セロトニンに関する理解を広めるために精力的に活動されている方です。

本書の内容からはそれますが、セロトニンという物質はサーカディアンリズム(太陽の動きに適応した人間の生体リズム)や鬱病との関係が深く、豆類によく含まれるトリプトファンから合成されるとか。

私は行動分析学(たとえばこの本とか)の裏のメカニズム「ドーパミン」のことは少しかじって知っていたのですが、セロトニンのことは全く知りませんでした。豆、もっと食べよう。

おふたりの代表的な紹介ページはこちら。
アルボムッレ・スマナサーラ長老 - 日本テーラワーダ仏教協会
有田秀穂 代表挨拶 - セロトニン道場
(ちなみに、テーラワーダ(Theravada)は日本語でいう「上座部」(仏教)だそうです)

最近座禅にこっており仏教と脳科学の両方に興味があるまさに私のための本だこれは!と思い、手に取り読みました。

目次
はじめに
第1章 お釈迦さまが気づいていた世界
第2章 お釈迦さまの日常生活
第3章 コミュニケーションと共感脳
第4章 現代人の問題
第5章 生きることへの科学の目、仏教の目
第6章 瞑想と脳の機能
おわりに


感想とか
仏教――特に上座部仏教は、一般的な枠組みでいう「宗教」というよりやや「生活学」に近いということはこの本を読む前から感じていましたが、この本を読んでその思いがより強くなりました。

スマナサーラ長老の話を聞いていて思うのは、やはり、開祖のブッダは、預言した人や奇跡を起こした人ではなく、試行錯誤の末に悟りを得た人(enlightened person)だったんだなぁということ。

考えてみれば、仏教は英語で Buddism なのに対し、キリスト教は Christianity 、イスラム教はそのまま Islam。「どうして仏教はほかのふたつと違って ism (イズム)なんだろう?」と思うのですが、これはたまたまそうなのか、中身をきちんと見た上で誰かが「あぁ、仏教はね、 religion というよりも ism だよね」ということで Buddism になったのか、どちらなのでしょうか。もし後者だったら、名づけ親はうまいこと言ったなぁ。まさにそのとおりだなと思います。

本書の対話で語られるのは、「今ここ」のこと、人間にとって普遍的なことが中心です。有田先生の西洋科学は分析的・物質的なアプローチで、長老の仏教は体験的なアプローチ。対象に迫る角度はそれぞれ異なりますが、どちらも要は、苦しみとか悲しみ、うれしさや幸せといった、私たちが生まれてから死ぬまで毎日感じるいちばん身近な感情との向き合い方について語っています。

という部分を読んでいて、純粋に「こういう本は多くの人に読んでほしいなぁ」と思いました。

これまで座禅を1年と少しの間続けてきて、座禅中は独特の感覚――仕事に熱中したときともジョギングとも他のスポーツとも異なる例えがたい感覚があることがわかってきたのですが、そのあたりのお話が「脳波がα波かβ波か」というよくある切り口以外に「セロトニン」という切り口から説明されており、ちょっと納得というか、わかったような気持ちになれました(実際に何がわかったということはないんだけれど)。セロトニンについては、もう少し理解を深めたいと思います。

・・・まだまだ語りたいところはあるのですが、いつもいざアップしてみたら「多過ぎたなこりゃ・・・」となるので、今回はこのぐらいで。

対談の途中ふたりの議論がすれちがっている部分や話がダレているかなと思われる部分もありますが、全体としては、仏教と科学と両方の視点が交互にやってくるので、いい意味で目まぐるしさが楽しめるおもしろい対談でした。

ポジティブ心理学の本と同じで、日々活かせる実践的知恵(逆にいうと、読んでも実践しないと役に立たない知恵)が詰まった本かと思います。


ピックアップ
ほんの数点だけピックアップしたいと思います。
スマナサーラ
お釈迦さまは(略)「いかだ」というたとえを使っています。「自分の教えは<いかだ>である。いかだで、この激流を渡れ」と。
そして、「安全な境地に着いたら、いかだは捨てていきなさい。いかだを運んではいけないよ」と、さらっと、こともなげに語るのです。(略)
もっとも、「経典はどうでもいい」と言ったらちょっと言い過ぎですね。(略)
でも、「はしごは、はしご」なのです。目的ではありません。(略)
はしごを見て拝んでも意味がないのです。使わなくてはいけないのです
有田
私は、呼吸には2つあると考えています。(略)
<生きるための呼吸>が1つと、そういう呼吸ではないもう1つの呼吸を、入息出息法、ないしは<呼吸法>と定義しています。(略)
その<呼吸法>の呼吸とは何かと定義するなら、「吐くこと」です。(略)
腹筋を意識して、呼吸法の呼吸を続けるだけで、α波がどんどん増えてきます。つまり、大脳の働きが変わっていくのです。
スマナサーラ
明るく生きていたい、うつにはかかりたくないと思うならば、死ぬ準備は絶対必要です。(略)
人間にとっては、死の準備は欠かせないと思います。子どもの頃でも若いときでも、人は必ず死ぬものだと自覚しておけば、時間を無駄にして生きることはできなくなります。
有田
脳の中のセロトニン神経は、リズムの運動で活性化します。歩いても、ガムをかんでも、瞑想の呼吸法でもいいのです。
スマナサーラ
仏教では、<苦・不苦>というふうに<苦>を先にしています。なぜならば、四六時中感じているのは<苦>であって、<快>はたまたまのことなのです。

このように、ふむふむなるほど!となるお話がさらっと出てくるので、読むときは注意が必要です。


おまけ
脳や仏教については、ほかにもおすすめの本をあげています。こちらもよろしければ。
図解 ブッダの教え
最新脳科学で読み解く脳のしくみ
脳が教える!1つの習慣


2012/09/27

NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法


NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法」を読みました。

原題は「Nonviolent Communication: A Language of Life」。

日本版タイトルの「NVC」はNonViolent Communicationの略で、いうなら「思いやりを最大限発揮するためのコミュニケーションの考え方」を表すことば。ガンジーの非暴力のコンセプトにならって著者がつけたものだそうです。

目次
第 1章 心の底から与える――非暴力コミュニケーションの核心
第 2章 思いやる気持ちを妨げるコミュニケーション
第 3章 評価をまじえずに観察する
第 4章 感情を見極め、表現する
第 5章 自分の感情に責任をもつ
第 6章 人生を豊かにするための要求
第 7章 共感をもって受け取る
第 8章 共感の力
第 9章 思いやりをもって自分自身とつながる
第10章 怒りをじゅうぶんに表現する
第11章 力を防御的に使う
第12章 自分を解放し、人に助言する
第13章 NVCで感謝を表現する

本書のテーマはずばり「コミュニケーション」。豊富な事例を挙げながら、一生使えるコミュニケーションの原則について解説してくれるすばらしい一冊です。

コミュニケーションという言葉の意味は非常に広いので、本書が言及しているコミュニケーションがそのどのあたりの話なのかといいますと・・・

コミュニケーションを大きく2つにわけると
他に何らかの目的があって、それを達成する手段として行うコミュニケーション
そのコミュニケーション自体を目的として行うコミュニケーション
という分け方ができるかと思います。

前者はたとえば、ビジネス上の営業活動やマーケティング活動、他部署との交流などで、後者だと、家族や友人との交流、ホスピスケアなどが挙げられるでしょうか。両者が大きく異なるのは、前者は、目的が達成できたかできないかという「成否の判断」がしやすいのに対し、後者はそういった成否の判定がしづらい点です。

はしょっていうなら、前者は「手段としてのコミュニケーション」、後者は「目的としてのコミュニケーション」。

もちろん、1と2はクッキリ分かれているわけではなくその境界はあいまいですが、本書でいう「コミュニケーション」をあえて分類するなら、後者の「目的としてのコミュニケーション」の方に入るかと思います。打算で行うのではなく、その過程自体を楽しみより深く人と接するという、そちらのコミュニケーションです。



この認識が著者と異なったまま本書を読むと、「いいコト言ってるけど、こんなことやっても何のメリットもないもんなぁ・・・」という感想を抱いてしまうことになるかもしれません。

そこを誤解しないで、著者のいうコミュニケーションの意味を正しく受け止めさえすれば(そして、そういうコミュニケーション能力を磨くことに興味があるなら)、ものすごくおもしろい本です。私は「ふだん無意識に行っているコミュニケーションについて改めて学ぶことなんてあるのかなぁ」とやや懐疑的な態度で読み始めたのですが、読んでるうちに引き込まれ、目からウロコがたくさん落ちました。

こんな方におすすめ
親しい人とのコミュニケーションをよりよくしたい
他人にも自分にももっと温かく接したい
ふだん家庭や職場で我慢することがよくある

ポイント

本書で語られるNonviolent Communicationのポイントをいくつかあげてみます。

#1 Nonviolent Communication(以下NVC)の定義
一言で言い表せる定義は本書の中には載っていませんでしたが、むりやり一言でいうなら

Nonviolent Communication
= 思いやりを最大限発揮し、相手も自分も満足するためのコミュニケーション


でしょうか。

本書内では次のように書かれています。
どのようにコミュニケーションをとれば、つまりどのように話をしたり聞いたりすれば、自分たちに本来そなわっている力――人を思いやろうとする気持ちを引き出せるのか、心の底から与えることができるのか、自分自身とそして相手と理解し合えるのかをさぐった。そうしてある方法にたどりついた。それを、「非暴力コミュニケーション」とわたしは呼ぶ。
NVCが基盤としているのは、過酷な状況に置かれてもなお人間らしくあり続けるための言葉とコミュニケーションのスキルである。(略)
具体的には、自分が表現し、他人の言葉に耳を傾ける方法を組み立て直す。型どおりに反射的に反応するのではなく、自分がいま何を観察しているのか、どう感じているのか、何を必要としているのかを把握したうえで、意識的な反応として言葉を発するようにする。人に対する尊敬と共感を保ちながら、自分自身を率直に明快に表現する。

#2 NVCの意義
NVCの意義は大きく2つあります。

ひとつは、対他人の視点で、身近な人ともっと深く理解し合い、より親しくなることができる、ということ。もうひとつは対自分の視点で、自分のことをより深く理解し受け入れることができる、そしてより穏やかになれる、というトコロ。

本書ではこのような記述があります。
NVCを使い、心の深いレベルで自分が何を必要としているのか、人が何を必要としているのかに耳を傾けると、相手との関係を新しい視点から理解できるようになる。
NVCを実践する場合、相手がNVCに通じている必要はない。また、心を通い合わせたいという気持ちが相手になくてもかまわない。こちらがNVCの原則に忠実であるかぎり、相手を思いやって与え、受け取ろうとするものであるかぎり、そしてそれ以外にめざすものは何ひとつないと相手に精一杯伝えるかぎり、相手もそのやりとりに参加して、やがては心を通い合わせるだろう。といっても、毎回これがすみやかに実現するなどというつもりはない。それでも、NVCの原則とプロセスを忠実に実践し続ければ、必ず、人を思いやる気持ちが花開くとわたしは信じている。
簡単じゃないけど、あきらめなければ必ずいつかは人と心を通い合わせることはできる!」――この信念がNVCの根底にあります。

#3 NVCの核となるフレームワーク
NVCの核となるのは、次のプロセス型フレームワークです。


要素は、観察感情ニーズ要求の4つ(本書内での言い回しは、観察、感情、必要としていること、要求です)。

すべてをここで解説はできないので、少しかいつまんでご紹介します。

私たちがディスコミュニケーションを生んだり、人とのやりとりの中でストレスを感じたりする原因のひとつは、混乱しているから。つまり、「何がどうなってそういう結果に至ったのか整理できず頭の中がごちゃごちゃになっているから」です。

たとえば、誰かが何か自分の気に食わないことをしたとき、ついつい怒ってしまう。それは、自分が「こうあるべき」「こうあってほしい」というニーズを持っており、それと現実がかい離したために起こる感情です。本来であれば、誰かが何かをした、という事実認識から直接負の感情が引き起こされることはないはずです。

そこには、事実ではなく「観察」、そして、「評価/判断」、「ニーズ」、「そもそもの価値観」というような諸要素が絡んでいます。しかし私たちはしばしば「事実→感情」とショートカットした部分だけを認識し、ほかの要素を見過ごしがちです。

そのあたりを適切にときほぐし、ひとつひとつつぶさに見ていこう(そしてそれをリアルタイムのコミュニケーションの中でできるようにしていこう)というのが、NVCの提案です。

#4 NVCを阻害するもの
NVCとは逆に、思いやりをムダにしたり、なくしたりしてしまう考え方というのも紹介されています。その中からいくつか挙げてみます。

  • 道徳を持ち出して人を批判する
  • 他人や偉人と自分を比較をする
  • 自分の行動や感情の責任を放棄し、「しなくてはならない」とあたかも自分には選択肢がないかのように考える
  • 自分の願望を他人に強要する
  • 「彼/彼女は○○(報酬や懲罰)に値する」という形で人を評価する

あああぁ。知らず知らずのうち無意識に批判したり比較してり、してしまってます。。このあたり、長く生きていると無意識でできてしまうのが怖いです。

・・・以上です。


感想

この本を読んで改めてコミュニケーションについて考えてみましたが、そういえば、大人になり歳を重ねてからつくづく思うようになったことのひとつが「コミュニケーションって終わりがないなぁ」ということ。

コミュニケーションはよくキャッチボールにたとえられたりしますが、ただボールを投げる、そしてキャッチする、ということであれば10歳かそこいらになれば大体はできるようになります。さらに、少し発展させたアクロバティックな変化球や背面キャッチなんかも、大人になるかならないかという頃にはある程度はできるようになります。

だけど、さらに進んで、「その場そのときに合った本当にベストなボールの投げ方をする」「ベストな受け方をする」というレベルを考えてみたとき、いまの私はとても「できてる!」とはいえません。。

これから時代が進んで、コミュニケーションの表面的なあり方はどんどん変わっていくかとは思いますが、思いをこめて人と触れ合うことや他人や世界と深いところで触れ合えたと感じられることが人生の醍醐味である、という点はこれからも長い歴史の中で変わることはないでしょう。

コミュニケーションの本質の部分をもっと理解し、もっと深く人と接し、自分を理解し、もっとずっと人生を楽しんでいきたい、と思わせてくれる本でした。おもしろいです。


2012/05/03

木のいのち木のこころ<天・地・人> / 西岡常一 小川三夫

木のいのち 木のこころ」を読みました。今回はカバー絵はなしで。。

この本のテーマはずばり、「宮大工」! 「宮大工」とは、お寺や神社を主に対象として工事・修繕を行う特別な大工のこと。家を建てたりする普通の大工とは、求められる技術も心構えも、ちょっと異なる仕事のようです。

この本には、「最後の宮大工」とも呼ばれた法隆寺大工・西岡常一さん、そしてそのお弟子の小川三夫さんをメインに宮大工(とそのタマゴ)たちへのインタビューの記録が書かれています。

宮大工についてのもう少し詳しい解説は、こちらのページなどに載っています。
宮大工 - 日本文化いろは事典

宮大工の技術が端的にわかるこんな動画もあったので、こちらもよろしければ。


(宮大工のすごさの真髄はこういった手業だけにあるのではありませんが、これだけでもすごいです)

1,300年以上もの歴史を持つ世界最古の木造建造物・法隆寺。その修繕を行ったのがこの本に最初に出てくる西岡さんでした。西岡常一さんについてはつい最近映画も作られたみたいです。
西岡常一とは - 宮大工西岡常一の遺言鬼に訊け

お弟子さん・小川三夫さんについてはWikipediaのページなんかが参考になるかと思います。
小川三夫 - Wikipedia

この本を読むと、日本が世界に誇るべきクラフツメン「宮大工」の「こころ」と技術を少しだけ垣間見ることができます。私はこの本を読むまでは宮大工についてはほぼ無知な状態でしたが、この本を読んで以降は「宮大工やばい!」(もちろんいい意味で)と思うようになりました。おすすめです。

この本を読むと
  • 一流の仕事人たちがどのような心構えで仕事をしているのか
  • 日本にはどれだけ素晴らしい職業があるのか
ということを知ることができます。売上がいくら、利益がいくら、顧客満足度がいくら、といった指標で動く仕事もいいですが(私はそれも嫌いではありません)、宮大工のような「人類の仕事」とも呼べるような仕事も、素敵だなと思います。

私は基本的に、「私たちの身のまわりにあるものはすべてナマものだし、淘汰を経て絶えず変わっていくもの」(一切無常)という世界認識ではいるのですが(仏教ベースです)、それでも、宮大工のような仕事に関しては、「短期的な景気の良し悪しや文化の移り変わりに負けず、いつまでも残り続けてほしい仕事」だと思いました。

以下、テーマ別にグッときたところをピックアップしてみます。宮大工だけに参考になるものではなく、あらゆる仕事人、あらゆる生活者にとって参考となるヒントがたくさん隠されているのではないかなと。

ピックアップ

自分の人生のその先の未来を見据えて働くということ
まずはいくつか引用します。
寿命をまっとうするだけ生かすのが大工の役目ですわ千年の木やったら、少なくとも千年生きるようにせな、木に申し訳がたちませんわ。そのためには木をよくよく知らなならん。使い方を知らななりませんな。
造られたものはその後、何十年も、何百年も、ものによっては千年を越えて建っていますし、残っていきますのやで。
私ら檜を使って塔を造るときは、少なくとも三百年後の姿を思い浮かべて造っていますのや。三百年後には設計図通りの姿になるやろうと思って、考えて隅木を入れてますのや
塔の再建には鉄を使わなあかんという学者にはこう言いましたわ。鉄を使ったらせいぜい三百年しか持たん、木だけで造れば千年は持つ、現に木だけで、ここに法隆寺のように千三百年の塔が建っているやないか、と。

この、「300年」とか「1,000年」といったスケール。。常に300年、1,000年という時間軸で仕事をしてるわけではないのかもしれませんが、私はまずこの視野の大きさに圧倒されました。。私が日々の仕事中に意識するのは、、せいぜい10年くらいかなぁ。。。

10年、20年ではなく、自分の人生のさらにその先を見据えて今日の仕事に取り組む。そういう姿勢の上にこそ生まれる仕事というのがあるのかもしれません。

昔読んだ『ビジョナリー・カンパニー』には「ウン十年の長きにわたり優れた業績を上げ続けている企業のヒケツは何か?」といったお話が書かれていましたが、それとは一回り違う時間軸をもって仕事をする仕事のあり方が日本にはありました。ビジョナリーカンパニーの前にこちら読むべきですね。灯台下暗し、です。。

また、「木だけで造れば1,000年もつ」というアイデアにも驚きました。私はどうも、昔の技術よりも最新の技術、木よりも鉄、の方がいいのかなと思いがちでしたが、どうもそうともかぎらないようです。そこらにある木でも、人間よりもずっと長く役に立ち続ける。木の偉大さをもっと知らなければいけませんね。。


素材を見きわめて活かしきるということ

素材を適当に使うのではなく、その癖を見きわめて癖を活かすんや、ということについても書かれています。
堂塔建立の用材は木を買わず山を買え
木は生育の方位のままに使え
堂塔の木組みは木の癖で組め
いずれも木の使い方の心構えを説いたものですな。要は自然の教えるままにしなさいと言うているわけです。その自然に対する心構えというのがどうしても大事になりますな。ものを扱うのも技術も、心構えなしには育たんもんですわ
木を生かす。無駄にしない。癖をいいほうに使いさえすれば建物が長持ちし、丈夫になるんです。
いくら檜が強いといいましても、それだけでは建物は持ちませんのや。檜を生かす技術と知恵がなければなりません
時代に生かさせてもらつているんですから、自分のできる精一杯のことをするのが務めですわ

素材を活かすには、その木だけを見ていてはダメ。その生まれたところ、育ったところも見て、その特性に合わせて使わなければダメ、ということでしょうか。

これは、モノも環境も、人でもそうだと思います。一人ひとりがイキイキとする職場を作りたいなら、リーダーシップとかそういうのよりも、本当の意味で人を知るということが大事なような気がします。

そして、自分自身についてもあてはまることかもなと思います。特に「木は生育の方位のまま使え」という考え方は、いいヒントになりそうです。人を矯正するのではなく、癖を知り癖を活かす。自分のことも、一緒に働く仲間のことも活かす。そう思って仕事したいです。


自分に課された役目・使命を考えるということ
私の仕事なんていうのはちっぽけなもんでっせ。この自然の流れのなかで、木を伐って建物に変えるのやから、できるだけ命を永くせな、私の意味がありませんわな。それが仕事ですわ。
時代に生かさせてもらっているんですから、自分のできる精一杯のことをするのが務めですわ。

心の底から「生かされているんだ」と感じること。そしてその感覚を「ありがたいなぁ」だけで終わらせずに仕事に持ち込むこと。私もこの「自分たちは生かされていて、自然を使わせてもらっている。それなら、できるかぎりをしよう」という視点を普段から強く持っていたいです。


使う道具を本当に大切にするということ
仕事を成り立たせるのが道具ですわ。道具なしには腕のよしあしはないんです。だから職人は道具を大事にするんです。自分や家族に飯を食わせるのと同時に、自分がどんな人間かを映し出すのが道具です
道具を見たら腕がわかるかって聞かれますけど、そりゃ、わかりまっせ。一番大事なものをどう扱っているかを見れば、その人の仕事に対する心構えが見えますな

これは本当にそうだなぁと思います。ときどき、日々パソコンに向かって仕事をしているのに「パソコンは苦手だから」といってパソコンの中身をぐちゃぐちゃにしたままの人がいますが、、私はそれは言い訳にならないかなと思います。伝統の道具でもITの最先端の道具でも、道具の扱い方、その整頓の仕方を見れば、その人の仕事ぶりや仕事のレベルがよぅくわかる、気がします。

・・・と言うからには、ちゃんとできるように、私自身はなるべく気をつけています(笑)。


棟梁の役割
百工あれば百念あり、これをひとつに統ぶる。これ匠長の器量なり。百論ひとつに止まる、これ正なり
百人の工人があればそれぞれ考えが違う。百人いたら百人別々の考えがあると思えというんですな。今どき学校でも会社でも、人の上に立つ人たちはこんなふうに生徒や社員を見ていますかな。この百人の心を一つにまとめるのが棟梁の器量というもんや
「工人たちの心組みは匠長が工人らへの思いやり」
これは文のとおりですな。匠長というのは棟梁のことですな。大勢の工人の心を汲んで一つにするためには棟梁に思いやりがなければならんということですな
私らが「大工にしてくれ」といわれて子供さんを預かりましたら、 一緒に飯を食って生活しますな。寝食を一緒にすることで、仕事にも大工の生活にもなじんでくるんです。大工というのは現場に出ているときだけやないんです。生活も大工なんです。学校と違って生活のしかたから全部教えるんです。知識やなく技術とともに人間としてのあり方も教えるんです

棟梁をつとめたり親方になったりするということは、技術だけでもいけない、(一般的な意味での)マネジメントだけでもいけない、リーダーシップだけでもいけない、ということかなと。ここ、人の人生や存在を丸ごと受け止めるようなたくましさ、それこそ「器量」とも呼ぶべきものが必要になるなのかも。

確かに、今どき、生徒や社員を上記のような視点で見ている人は少ない感じがします。。。


・・・以上です。他にもたくさんいいところがあるので、また取り上げたいと思います。


一言感想

読んでいると、自然に涙が出てくる感じになってしまいました。なんといいますかこの、真摯な仕事の捉え方や師弟愛、ひたすらな生き方などなど。仕事にこれほど思いを込めて生きている人がこの世に存在している(しかも世界的に見ればかなりご近所!)というだけでおなかいっぱいというか、「なんだか生きていきてよかったなぁ」と思います(笑)。

私も、疲れたときにはすぐにグダってしまうのですが、、できるかぎり、あらゆる仕事の場面で自分の全身全霊をかけて取り組みたいと思いました。でもとても、西岡さんたちのようにはできないなぁ。。彼らのはほんと、仕事というより、働きざま、生きざまという感じだもんなぁ。。


おまけ
この本を読む前にもう少し宮大工や西岡さんについて知ってみたい場合は、こちらのページなんかがおすすめです。このあたりでも、ほぼ日すごいです。

法隆寺へ行こう! 千三百年前の宮大工棟梁に出会う旅 - ほぼ日刊イトイ新聞
一生を、木と過ごす。 - ほぼ日刊イトイ新聞
市民栄誉賞受賞記念特別対談(小川三夫)
鬼に訊け -宮大工 西岡常一の遺言-
法隆寺 - Wikipedia


2012/03/15

自省録 / マルクス・アウレーリウス 神谷美恵子


マルクス・アウレーリウスの「自省録」を読みました。

本書について

本書になじみのない方(私も読む前はそうでした)のために、まずはこの本の著者マルクス・アウレーリウスについて。

マルクス・アウレーリウスとは
この本の著者・マルクス・アウレーリウスは、今からおよそ1900年前、2世紀頃に活躍したローマ帝国の皇帝です。ローマ総督・執政官の職にあった祖父のもとで育った後皇帝アントーニヌス・ピウスに養子として迎えられ、40歳のときに皇帝となった人、だったそうです。私は世界史に疎かったためか、本書を読むまでその存在を知りませんでした。。

自省録とは
「自省録」は、皇帝マルクス・アウレーリウスがその生涯の中でつづった膨大な量のメモ書きを一冊に集めたものです。超実践家、実務家としての皇帝らしからぬ(?)哲学的な思索がのびのびと繰り広げられている一冊です。

それもそのはず・・・と言っていいかどうかはわかりませんが、そもそも自省録に収録されているメモは人に見せるためではなく「自分だけが見る日記」として書かれたものだとか。だから、形としては勝手に公開されて勝手に読み継がれている本、ということになるでしょうか。。うっかりエラくなってしまった日にゃあ、公開するつもりなんて全くなく好き勝手書いた日記が公開されてしまったりするので、要注意ですね笑。さらに運が悪いと(運が良いと?)後世2000年近くも読み継がれてしまったりするので大変です。

それはそうと。

メモとして書かれたため、全体を貫く一貫したメッセージや周到な構成はありません。言葉の意味がよくわからない部分や重複した記述もたくさんあります。ただ、その言葉のひとつひとつには実務家ならではのリアリティがあり、思想には時代を越える普遍性があります

世に言う「帝王学」というのがどういうものを指すのかよくわかりませんが、自省録を読んで「こういう考えが帝王学っていうのかなぁ」と思いました。これが帝王学なら、悪くない気がします。


ピックアップ

以下に、胸に刺さったポイントをいくつか抜粋します。・・・の前にお断りを。自省録は、ひとつひとつの主張を正しく読むことも大切ですが、それ以上に、全体を「感じる」ことが大切なように思います。断片化した一語一語よりも、その数多の言葉を俯瞰したときにうっすらと浮かんで見える「マルクス像」「人柄」を見ることが大切かなと。

読み始めて間もない頃は「どうしてこんなに雑多なメモを集めてあるんだろう・・・」と思ったのですが、読み終えてみると、メモのひとつひとつは雑多であっても、全体を見通したときに見える全体像にこそ自省録の醍醐味があるのかなと感じました。そのため、抜粋というやり方はあまりよくないと思いますが、、、、魅力をご紹介するためにあえてポイントを3つに絞って抜粋してみます(面白そうであれば、ぜひ文庫を買って、書き込みながら読んでみてください)。

ポイントその1.感謝のきもち
ひとつめのテーマは感謝のきもち。自省録では「これでもか」というほど(笑)周りの人たち、人生の中で出会う出来事・巡り合わせに対する感謝のきもちが述べられています。ここでは、その中から「父に感謝していること」「神に感謝していること」を一部挙げてみます。親をよく見てよく学ぶ、マルクスの観察力・吸収力の高さが見てとれます。

父から

  • 温和であること
  • 熟慮の結果いったん決断したことはゆるぎなく守り通すこと
  • いわゆる名誉に関してむなしい虚栄心を抱かぬこと
  • 労働を愛する心と根気強さ
  • 公益のために忠言を呈する人びとに耳を貸すこと
  • 各人にあくまでも公平にその価値相応のものを分け与えること
  • いつ緊張し、いつ緊張を弛めるべきかを経験によって知ること
  • 評議の際、ものを徹底的に検討しようとする態度
  • 彼(自分)に対する喝采やあらゆる追従をさしとめたこと
  • 帝国の要務について日夜心を砕き、その資源を管理し、そのために起こる非難を甘んじて受けたこと
  • 人生を快適なものにするすべてのもの――それを運命はゆたかに彼に与えたが――を誇ることもなく、同時に弁解がましくもなく利用し、そういうものがある時にはなんら技巧を弄することもなくたのしみ、無い時には、別に欲しいとも思わなかったこと
  • 人づきのよさと少しも気むずかしいところのない慇懃さ
  • 自分の肉体にたいする節度ある配慮
  • すべて祖先の伝統に従っておこないながら、伝統を守っていることをひけらかさなかったこと
お父さん、ちょっとかっこよすぎます。

神々から

  • よき祖父、よき両親、よき妹、よき師、よき知人、親類、友人たちを持ったこと
  • 私の妻のようなあれほど従順な、あれほど優しい、あれほど飾り気のない女を妻に持ったこと
  • 修辞学や詩学やその他の勉強においてあまり進歩しなかったこと
  • 自然にかなった生活について、それがどんなものであるかの概念をはっきりと、そして頻繁に持ったこと
  • 私の身体がこのような生活にこんなに長い間持ちこたえることができたこと
よくもこれだけ挙げられるなぁと呆れるぐらいだくさんあります。「能力がないこと」まで感謝しています。私はとてもこれだけ感謝できてないなぁ。。。見習わないと。

これを読むと、「感謝」には力が必要で、たとえば、周りの人が何をやっているのか、自分の周りでどんなことが起こっているのかといったことを正しく見れるレンズが必要だということがわかります。逆に、周りで起こっていることを正しく認識するレンズさえあれば、感謝の気持ちはもう自然とわき上がってくるもの、なのかもしれません。


ポイントその2.人生の短さ
ふたつめには、人生の短さについて。これは自省録の全体を通じて何度も出てくるテーマです。

今すぐにも人生を去って行くことのできる者のごとくあらゆることをおこない、話し、考えること。

なんとすべてのものはすみやかに消え失せてしまうことだろう。
人生の時は一瞬に過ぎず、人の実質(ウーシアー)は流れ行き、その感覚は鈍く、その肉体全体の組合せは腐敗しやすく、その魂は渦を巻いており、その運命ははかりがたく、その名声は不確実である。

一言にしていえば、肉体に関するすべては流れであり、霊魂に関するすべては夢であり煙である。人生は戦いであり、旅のやどりであり、死後の名声は忘却にすぎない。

人生は一日一日と費やされていき、あますところ次第に少なくなっていく。(中略)我々は急がなくてはならない、それは単に時々刻々死に近づくからではなく、物事にたいする洞察力や注意力が死ぬ前にすでに働かなくなってくるからである。

記憶せよ、各人はただ現在、この一瞬間にすぎない現在のみを生きるのだということを。

あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。

すべてかりそめにすぎない。おぼえる者もおぼえられる者も。
遠からず君はあらゆるものを忘れ、遠からずあらゆるものは君を忘れてしまうであろう。

「人生は短い」という言葉をマルクスはいろんな言葉で教えてくれます。どれだけ言っても言い足りないと感じていたのかもしれません。

私は忙しいとついそこを忘れて汲々とし、夜ベッドの中で落ち着いたときにようやく思い出したりするのですが、ここのところはなるべくいつも忘れずにいたいものです。

「何によって覚えられたいかね?」というドラッカーの問いも、人の間に生きてゆく私たちの生き方を考えるためには良い問いですが、マルクスが言うように、そういった名声や評価も所詮は消えゆくもの。だから、「人が自分をどう認識するか」といった部分を越えて他人の評価を越えて、「我なさんことただ我のみぞ知る」という龍馬のこころの方がいいのかも、しれませんね。


ポイントその3.人生における基本姿勢
みっつめは、人生全般において持つべき基本的な姿勢、心構えについて。

何かするときいやいやながらするな、利己的な気持からするな、無思慮にするな、心にさからってするな。
いかなる行動をもでたらめにおこなうな。技術の完璧を保証する法則に従わずにはおこなうな。
「私は今自分の魂をなんのために用いているか。」ことごとにこの質問を自分にたずねよ。
君がこの世から去ったら送ろうと思うような生活はこの地上ですでに送ることができる。
ただつぎの一事に楽しみとやすらいとを見出せ。それはつねに神を思いつつ公益的な行為から公益的な行為へと移りゆくことである。
もしある人が私の考えや行動がまちがっているということを証明し納得させてくれることができるならば、私はよろこんでそれらを正そう。
理性的動物にとっては、同一の行動が同時に自然にかなったものであり、理性にかなったものなのである。
あたかも君がすでに死んだ人間であるかのように、現在の瞬間が君の生涯の終局であるかのように、自然に従って余生をすごさなくてはならない。
目前の事柄、行動、信念、または意味されるところのものに注意を向けよ。
行動においては杜撰になるな。会話においては混乱するな。思想においては迷うな。魂においてはまったく自己に集中してしまうこともなく、さりとて外に飛散してしまうこともないようにせよ。人生においては余裕を失うな。
働け、みじめな者としてではなく、人に憐れまれたり感心されたりしたい者としてでもなく働け。ただ一事を志せ、社会的理性の命ずるがままにあるいは行動し、あるいは行動せぬことを。
君の仕事はなにか。「善き人間であること。」

これらはすべて、ふたつめに挙げた「人生は短い」という根本認識とつながっています。

志に従うこと。自分を騙すのではなく自分の本当の心、本心に従って行うこと。目の前のことに全精力を注ぐこと。細部まで神経を使うこと。そして究極には、自分の仕事は「特定の職業」ではなく「善い生き方をすること」だと思って生きること・・・

志にのみ生きるのではなく。ただ自分の心にのみ従うのでもなく。複数ある「大切なもの」のいずれも見失わずに、めいっぱい生きろ、とマルクスは言ってます。

ただストイックに生きるのでもなく、享楽にふけるのでもなく。理性と楽しみ、使命と安らぎ、それらをともに求めながら、そして人の言葉を真摯に受け止めて「善く」生きよう、というのがマルクスの主張です。これ、考えを追っているとだんだんわけわからんくなってきます笑。どういうこと。


・・・このあたりの「生き方の哲学」については、「考えすぎてカタくなる」というのはもちろんダメですが、「何も考えず、ただ流れに身を任せればよい」というのもまた違うのかなと本書を読んで思いました。なんといいますかこのあたり、反復を続けていつの間にか無意識のうちにカラダが良い動きをする、いわゆる「心の欲するところに従いて矩をこえず」状態になれれば、素敵かなと思います。

ん、難し。でも、本当に面白いです。


最後に

およそ2000年前に生きた皇帝マルクスも、現代を生きる私たちと同じような哲学的疑問――たとえば、理性や自由、人生、世界のあり方、そして、いかに生きるべきかということについて考えていたということがよく伝わってきました。これだけ強い思いを持って生きた人がいたという事実に素朴に感動します。なんだか、「人間に生まれてこれてよかったなぁ」と目頭が熱くなりました。最近こういうことで目頭が熱くなってたまらんです笑。

本当に、大昔の皇帝から直接話を聞いているようなワクワクした気分になれました。ぜひ、また時間をおいて再読します。

自助論や、「一度きりの人生いかに生きるか」というお話が好きな方に、本当におすすめな一冊です。もし読まれたら、ぜひご意見お聞かせいただきたいです。


2012/02/22

映画:カンフー・パンダ2


今回は映画です。映画「カンフー・パンダ2」を観ました。



去年観た前作(1)がものすごく良かったため「これは!必ず!映画館で!観たい!」と思いながら結局観れずじまいだった今作。iTunesで借りて観ました。

前作もそうでしたが、本当に、大人が観ても楽しめるいい映画。ベースは「家族で楽しめるCGアニメ」で、テーマもストーリー展開もキャラクターもまさに王道的なのですが、細部の工夫と作り込みがすごくて、純粋に面白かったです。

カンフー好き、ブルース・リー好きのためだけに作られたような細かい作りこみに、個人的にはグッときます笑。ワンシーン、1秒たりともムダにしない徹底したプロフェッショナリズムのようなものが感じられました。

いまや実写でもアニメでも実現できない「CGならでは」の表現がこんなにもたくさんある、ということがよくわかります。CG映画の歴史はそれほど長くはないかと思うのですが、本当にこのあたりは日進月歩ですね。。。

この映画を観ていたら、「アイデアは新しい組み合わせ」というジェームズ・ヤングのことばを思い出しました(最近しょっちゅう思い出すけれど)。「カンフー・パンダ2」の素材はどれも――「カンフー」も「パンダ」も、大筋のプロットも、諸々の笑いのタネも――ある意味ではすでに「原型」として長く存在し続けてきた「よくあるもの」(クラシックあるいはベタ)ばかり、かもしれません。しかし、それらを「カンフー・パンダ2」というタイトルのもと、新しい技術を使い、新たな切り口・組み合わせのもとに統合しきれいにほつれをまとめることで全く新しい作品として生み出す、ということが見事にできている感じがしました。

映画にかぎらず、ビジネスだって、アートだって、すべての活動においてこのあたりは一緒のような気がします。コロンブスのタマゴ。こういう、歴史に裏打ちされた「ベタ」をたくさん使いながらも「退屈」で終わらない「本当にイイちょっと新しいもの」を作れるような仕事を、自分もやっていきたい、と思いを新たにしました。


余談ですがこちらは「we will rock you」風プロモーション。


カンフー・パンダ2の中からよかったセリフを2つ取り上げてみます。名言の数は前作ほどではありませんが、本作にもいくつも名言が。

Stop fighting. Let it flow.
逆らうな 流れに任せろ

You got to let go of the stuff from past, because it just doesn't matter.
The only thing that matters is what you choose to be now.
過去は忘れなよ どうでもいいんだから
大事なのは今 自分がどんな人生を選ぶかだ

いいこと言います。 what you choose to be now あたりは前作の Today is a gift とも繋がったメッセージです。聞いた瞬間わかったつもりになりましたが、わかるようなわからないような。。ちょっと難しい言葉ですが、一人でも多くの子どもがこのメッセージを受け取ってくれればなぁ。難しい環境や経験のある子にこそ、受け取ってほしいメッセージです。

カンフー映画のいいところのひとつは、こうやって、師匠的な立場の人が熱い言葉をさらっと穏やかに語ってくれるところ、です。カンフーにかぎらず東洋の武道全般でこういうところはあるかと思いますが、柔道映画や空手映画は、なかなかないようです。


ともあれ。ベタなところもたくさんありますが、いい映画です。早くも今からカンフー・パンダ3が楽しみになってきます。

イーーーヤッハーーー!!!


おまけ
余談ですが、クレジットを見たときに「ジャッキー・チェンとジャン・クロード・ヴァン・ダムが初競演?」なんてワクワクしたりもしたのですが、ジャッキーもジャン・クロード・ヴァン・ダムも吹き替えの声でなじんで育った私にとって、声を聞いても本人なのかどうか全くわかりませんでした笑。

おまけ
公式サイト関連はこちら。
カンフー・パンダ2公式サイト
カンフー・パンダ2Facebook公式サイト
KungFoo Panda - Wikia(カンフー・パンダのまとめ)

ポーがYouTubeを壊す特設ページがYouTube内にあります。シュカデゥーッシュ!
Epic Skadoosh - Behind the scene of KungFu Panda2

カンフー・パンダ2(字幕版)

2012/02/01

FISH! 鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方 / スティーブン・C・ランディン ハリー・ポール ジョン・クリステンセン


FISH!」を読みました。

この本は、いわゆる「組織変革」本(「人生をもっと楽しむ方法」に関する本でもあります)。社内の評判は最悪、部内の雰囲気も最悪。そんなダメダメ部署がイケてる部署へとどうやって変革していくのかという一連の流れを描いたショートストーリーです。

こんな状況から物語はスタートします。

スタッフはみなのろのろと短い時間仕事をして、薄給をもらっている。ほとんどの人は何年も前から同じやりかたでいやいや仕事をしていて、退屈しきっている。いい人たちみたいだけど、まるっきりやる気がない。この部署の沈滞した雰囲気に毒されて、新しくきた人もすぐにやる気を失ってしまう。

組織の空気、いわゆる「組織文化」というものを良いものへと変えていくにはどうすればいいのか。その方法論のひとつがこの本では紹介されています。

企業その他の「組織」というもののパフォーマンスを決める要因は数多くあり、「文化がすべて」というわけではありません。しかし、組織文化という組織の最もソフトな側面は制度、構造、スキルといった他のすべての要因のベースになりえますし、また、企業存続の第一義は「営利」にあるとしても、第二義としては人びとの「主な活動の場」というのがあるかと思います。「主な活動の場」の雰囲気や文化というのは人のQOLにダイレクトに影響してきますし、その意味でいうと、「組織文化」(そして、それを構成するメンバーの「働く姿勢」)というのは「組織において一番大切なこと」といってもよいのかもしれません。

そんな組織文化についてシンプルに、かつ臨場感豊かに考えるチャンスを与えてくれるのがこの「FISH!」です。

タイトルのFISH!の由来は、活気いっぱいの魚市場「パイク・プレイス・マーケット」。アメリカ・シアトルに実在する市場で、物語中に登場します。「魚を放り投げる」のが名物の市場だそうで、その様子が見れる公式サイトや動画なんかもあったりします。

PIKE PLACE MARKET






エッセンスがシンプルで分量も100ページちょっとなので、さーっと読めてしまうお気軽な一冊です。しかしさらっと読めるだけに注意が必要、かもしれません。組織の変革を進める上でキーとなるポイントが各所で出てくるのですが特に強調などもされずさりげなく書いてあるので、ただ読むだけだと見逃してしまう、かも。。

本書の副題のとおり、まずは「ぴちぴちオフィスのつくり方」の戦略を、そして次に、戦略を落とし込むプロセスのエッセンスを本書から取り上げてみたいと思います。


ぴちぴちオフィスのつくり方 戦略編

本書では、ぴちぴちオフィスのつくり方として4つのポイントが挙げられています。
態度を選ぶ
つねにポジティブな姿勢で出社するように心がけること。
遊ぶ
オフィスが活気にあふれるような遊び方を取り入れることが大事。
人を喜ばせる
顧客や同僚に対してエネルギッシュな楽しい雰囲気で接しよう。
注意を向ける
人があなたを必要としている瞬間を逃さぬよう、いつも気をくばろう。

いずれも聞いたら「なぁんだ」と思うような本当にシンプルなことですが、これ、「毎日できてますか?」と聞かれると、私はできてない日の方が多い気がします。。行うは難し。「そんなシンプルなことできてるわー、、、いや、できてないかも」という方にこそ読んでいただきたいです。

ちなみに英語ではそれぞれ
態度を選ぶ CHOOSE YOUR ATTITUDE
遊ぶ PLAY
人を喜ばせる MAKE THEIR DAY
注意を向ける BE PRESENT
と言うそうです。余談ですが、BE PRESENTって、いい言葉ですね。


ぴちぴちオフィスのつくり方 プロセス編

こちらは、上述の「組織の変革を「進める」上でキーとなるポイント」。本書の中で明示的にポイントとして取り上げられているわけではありませんが、「こういう進め方だったらうまく行って当然だな」と思ってしまうポイントがたくさん載っています。それをここでは挙げてみます。

書き出す 堂々巡りをしないために、気づきや考えを書き出すこと。組織変革を順を追って着実に行うために、今行うべきことや自分の心象をクリアにすること。

良いモデルを見つける 変革後のビジョンを描くための具体的モデルを持つこと。この本の場合はパイク・プレイス・マーケットでした。

キーパーソンを押さえる 権限をもらったり意思決定をしてもらったりするために上司や他部署のキーパーソンを押さえること。

リスクをとる覚悟をする 変革には個人的リスクがつきものです。そういうリスクをとる覚悟をすること。

押し付けるのではなく機会を与える 変革を押し付けるのではなく、機会を与えることで「変えたい」「変わりたい」と思ってもらうこと。組織といってもしょせんは人の集まりですし、ムリヤリ人に変えられることを望む人はいないので、「主体性」は不可欠す。

上からではなく対等な立場で話す 変革が必要な組織のメンバーに話すとき、対等に話すこと。大事なのに軽視されがちなポイントかもしれません。もしかしたらこれが一番難しいことかも。

一方的に話すのではなく話を聴く メンバーに話すとき、一方的に話すのではなくメンバーの話も聴くこと。これも、高いレベルでできている人はなかなかいないような気がします。

都度感謝する メンバーが自主性を発揮してくれたり、率直な意見を言ってくれたときに、ちゃんと感謝すること。このあたりは人柄の問題かもしれませんが、信頼される変革者には必要な気がします。

丸投げせず協力する メンバーに何か宿題やタスクを課すときには、丸投げしないこと。答えは持っていなくても、最大限協力する姿勢を示すこと。

大事な部分はしめる 出てくるものは未定でも、いつ何をやるのかはあらかじめ決めること。出てきた意見や決定事項はまとめること。

信じる メンバーのことを信じること。これも、本書の主人公は自然にやっていましたが、現実ではなかなかなされていないことかもしれません。

・・・以上です。

書いたものを振り返って見てみると、「変革というのも、なかなか泥臭い、難しい仕事だなぁ・・・」と思えます。「変革」というと聞こえはカッコイイですが、それを実践できる人はなかなかいないように思います。日本航空の再建に稲盛さんが出てこざるを得なかったというのも、、わかるような気がします。。


一言感想

最近「21世紀の働き方」を考えている一環で「経営の未来」「学習する組織」「エクセレントカンパニー」といった分厚めのマネジメント本(?)を立て続けに読んで消化不良になってしまったので、、半分息抜き目的でこのFISH!を手にとりました。単純に楽しむ意味でも、新鮮な気持ちで原点に戻るという意味でも、いい機会をもらえた本でした。

いま私の周りにも、「態度を選ぶ」「遊ぶ」「人を喜ばせる」「注意を向ける」を日々自然に実践している人がいます。「この人なんだかすごいなぁ」と思っていた人の特徴を、要素に分解して分析するきっかけにもなりました。

今の私のニーズにちょうど合っていたこともありますが、良書かと思います。


おまけ
Fish!の変革を実践する著者らのサービスのプロモーション動画がありました。




もとの英語版「Fish!」も112ページと短いので、英語勉強中の方はそちらで読んでみるのもよいかもしれません。

2012/01/01

2011年に読んだ本ベスト9冊

2011年ももういよいよ終わりますね。今年は本当にいろんなことが起こった1年でした。

このブログについていえば、2011年はこれまでで最も多い、74コの記事を書いた年でした。それだけたくさんの名著に出会えたということに、まずは感謝、です。本当にありがたいことです。

本年のしめくくりとして、2011年のベストオブベストを選んでみました。去年は「あれもこれも」と欲張ったら結局27冊にもなってしまったので、、、今年はなるべく絞ろうと心がけました。最終的に、全部で9冊になりました。

振り返ってみると今年はかなり精力的に本を読んだ年で、速読っぽい感じでサラッと読んだものや昔読んだものの再読をあわせるとトータルで150~250冊くらい読んだかと思います。その中でベスト9冊。私がよくも悪くも(笑)強く影響を受けた本たちです。よろしければご参考にしてください。

では1番目から。

1 HAPPIER / タル・ベン・シャハー

このブログでの紹介はまだですが、2011年に読んだ本の中でベストオブベストをあえて一冊!選ぶとしたら、このHAPPIERです。この本で私は価値観が一皮むけたと(自分では・・・)感じた一冊です。

中身は、「ポジティブ心理学」という心理学の新領域を概説したもの。昨年日本でも大ブームとなったマイケル・サンデルのジャスティス(政治哲学)の次にハーバード大学で一番人気となった講義があるのですが、その講義を担当していたのがこの著者、タル・ベン・シャハー。そのNo.1講義のエッセンスを日本語で味わえるという、大変おいしい一冊です。

詳しい説明はまた別に書くとして、この本の価値を一言でいうなら、「中長期的な成功と高い幸福感とを両立できる方法を教えてくれる」ところにあります。しかも、心理学本なのに全然怪しくありません(笑)。アカデミックな裏づけもしっかりしています。

この「ポジティブ心理学」については以前まとめたことがあるのでよろしければそちらもどうぞ。
ポジティブ心理学についてのまとめ その1 - Today is a gift

「ポジティブ心理学」の提唱者のひとり、マーティン・セリグマンはTEDでスピーチもしています。

2 Focus / レオ・バボータ

人気ブログ「zen habits」の著者が書いたEブック。 ITの進歩と大量の情報に圧倒される人生、ノイズとdistraction(気をそらすもの)にあふれた人生、目標と成功に捉われたガチガチの人生。それらからの脱出を提案する刺激的な一冊です。 私はこの本がきっかけで ・ストレスと戦う働き方 ・ストイックな生き方 ・努力すればするほど良いとする考え方 をやめました。適度なストレスは良い刺激となりますが、何もストレスと「戦う」なんてことはしなくても、ストイックにやらなくても、きちんとパフォーマンスを発揮し成長していく行き方は確かにあるんだなるということをこの本から学びました。 21世紀にふさわしい働き方や、自分の健康や感情・家族を犠牲にしない働き方に興味がある方におすすめの一冊です。 英語で書かれていますが、比較的平易な単語を使って書かれており全100ページと短いので、英語の勉強がてらにぜひ! Focus / レオ・バボータ

3 図解 ブッダの教え

3冊目は、仏教をばっくりと俯瞰する視座を与えてくれる一冊。仏教の生みの親・ブッダの個人的体験についての解説の部分を厚めに、仏教の全体像をわかりやすく解説してくれています。 私は、今年のはじめに「キャリア戦略を再考する」ということを行ったのですが、そのとき、「仮説でもいいから人生の見通しを持ちたい」と思い、参考本としていくつか本を読みました。その中の一冊がこの「ブッダの教え」でした。 この本から私が学んだのは、仏教の原点が「よりよく生きたい」「苦しみを少しでも減らしたい」というごくシンプルな欲求だったこと。そして、それが長い年月の中でそれなりの理由とともに変化してきたということです。諸行無常、諸法無我といった仏教のコンセプトも、なぜそういうアイデアが生まれるに至ったのかがわかると、個k路おの もちろん、これ一冊で仏教の全体をカバーできるわけではありませんし、仏教は「実践してこそ」のものなので読書は仏教理解の第一歩にすぎません。それでも、どうにか仏教を理解したい、仏教を参考に骨太なキャリアプランを立てたい(笑)と思うなら、ぜひおすすめしたい一冊です。 余談ですが、私はこの本をきっかけに座禅も始めました。 図解 ブッダの教え 普及版 / 田上太秀監修

4 RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

最初の3つに力が入りすぎたので(笑)、4つめ以降はサクッといきます。 4つめは映画「RAILWAYS」。自分が年を取ってからの親との関わり方、本当にかっこいい生き方とはどういうものか、ということを考えるきっかけをもらいました。 RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

5 佐藤可士和の超整理術 / 佐藤可士和

このブログのタイトルにも掲げている「整理」本で一冊選ぶなら、佐藤可士和さんの「超整理術」です。佐藤可士和さんのような今の日本を代表するトップクリエイターが、実はロジカルで工学的な考え方で問題解決をしている、ということが私には衝撃でした。また、整理術には本質的な価値があるということを確信できた本でもありました。 佐藤可士和の超整理術 / 佐藤可士和

6 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

こちらも整理術本です。佐藤可士和さんの本が整理術全般を扱っていたのに対し、こちらは「タスクの整理」に特化した一冊です。 この本では「GTD」というタスク管理手法が提唱されているのですが、このGTDを身につけるとタスク管理のストレスがスッパリなくなります。現代人は誰しも少なからず、「あふれたタスクにうまく対応できない」「やりたいことがいっぱいなのにキャパが足りない」というジレンマを感じているかと思います。そんなジレンマを気持ちよく解消できる一冊(もちろん、ちゃんと実践すればの話ですが)。 いまやGTDアプローチは、私の生活になくてはならないものとなりました。これひとつで、私が一日に処理できるタスクの量はそれまでの2倍くらいにはなったと思います。 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 / デビッド・アレン 田口元

7 脳が教える!1つの習慣 / ロバート・マウラー

こちらは「習慣化」切り口で今年ベストだった一冊。習慣化の原理と実際の実践方法を、行動のおおもととなる「脳」のメカニズムに立ち返ってとてもわかりやすく解説してくれる本です。 人間がどんな変化を生み出すにしても、どんな成長をするにしても、「習慣化」というプロセスは必ずつきまとってきます。その、人間の変革と成長に常に関係する「習慣化」のレベルをひとつ引き上げてくれる一冊です(ただしこちらも、「読んだことを正しく理解して実践すれば・・・」の話ですが)。 脳が教える!1つの習慣 / ロバート・マウラー 本田直之 中西真雄美

8 レコーディング・ダイエット 決定版 / 岡田斗司夫

こちらは習慣化の手法を「ダイエット」という具体的なテーマに落とし込み、よりわかりやすく実践的に解説してくれる一冊。テーマはたまたまダイエットになっていますが、あらゆる習慣化に応用可能な本質が書かれています。万年「趣味はダイエット」を本気で脱したい方に読んでいただきたい一冊。 レコーディング・ダイエット 決定版 / 岡田斗司夫

9 BORN TO RUN 走るために生まれた / クリス・マクドゥーガル

最後は、ランニング本。ノンフィクション小説をベースに、人類学やランニング科学のエッセンスも取り入れた欲張りな一冊(笑)。どうしても地味になりがちなランニングに、壮大な物語性を持たせてくれます。 この本を読む前から走ってはいましたが、私はこの本でランニングがもっと好きになりました。 BORN TO RUN 走るために生まれた / クリス・マクドゥーガル

・・・以上です。

来年は、日本のEブック市場なども大きな変化を迎えそうな1年です。2012年、よい1年になりますように。