2013/02/28

海からの贈物 / アン・モロー・リンドバーグ


海からの贈物」を読みました。

原題はそのまま「Gift from the Sea」。

著者のアン・モロー・リンドバーグは、大西洋横断飛行を初めてなしとげたあの「チャールズ・リンドバーグ」の奥さま。なんと夫婦揃って優れたパイロットだった、とのことですが、この本ではそのパイロットとしての経歴には触れず、20世紀のアメリカに暮らすごくふつうの女性としての思索の跡が書かれています。

夫や子どもたちと少しのあいだ離れ、フロリダの海辺(このあたりのようです)の小さな家で休暇を過ごした著者が、その滞在の間か直後ぐらいに書いたのがこの本です。砂浜で見つけた貝殻をモチーフに、「人生」や「夫婦」、「人と人との関係」、「独りの時間」、「現代の女性の生き方」といったものについて語っています。

この本が書かれたのは1950年頃で、もう今から60年ほども前のことですが、著者の語りからうかがえる当時の時代背景は現代の日本ととても似ているように思います。
  • 個人が解放されて生活の自由度は上がったものの、生活は雑然としている
  • みんないろいろなものに忙しく、自分と語り合う時間を持てていない
  • 多くの人が過度に孤独を恐れ、隙間があればすぐに埋めようとし誰かと繋がろうとする

個人的に
  • 生活をできるかぎりシンプルに保つこと
  • 人といっしょにいる時間と独りで何かする時間とのバランス
  • 自分の頭で考えること
  • ときには何も考えないこと
といったことはかなり普遍性の高い(多くの人にとって有効な)「人生をよりよくしてくれるカギ」かなと最近思っているのですが、この本ではまさにそういうところのお話が書かれていたので、「そうそう!それそれ!」とたくさんうなづきながら読みました。

この本をどこで知ったのか、読み終わるときにはすでにそのきっかけを忘れてしまっていたのですが、、、共感しながら感心しながら、おもしろく読むことができました。

いわゆる「シンプルライフ」や「ミニマルライフ」、「リーンライフ」といったものや、夫婦の暮らし、家族の暮らしの話題に興味がある人におすすめです。どちらかというと、個別具体的な技術よりも、ベースの考え方に焦点が当てられた本です。


以下、よかった部分をいくつかピックアップしてみます。

人生に対する感覚を鈍らせないためになるべく質素に生活すること体と、知性と、精神の生活の間に平衡を保つこと、無理をせずに仕事をすること、意味と美しさに必要な空間を設けること、一人でいるために、また、二人だけでいるために時間を取っておくこと、精神的なものや、仕事や、人間的な関係からでき上がっている人間の生活の断続性を理解し、信用するために自然に努めて接近することなどであって、いわば、そういう幾つかの貝殻である。
生活するということにも技術があって、恩寵を求めるのにも技術があるとさえ言える。そしてそういう技術を習得することもできる。
そういう相反した方向に働く幾つもの力の作用にさらされて、平衡を保っているということが私たちにはどんな困難なことだろうか。またそれにも拘らず、それは私たちにとってどんなに大切なことだろうか。宗教生活で常に説かれる不動ということは、私たちにはどんなに得難くて、そしてまた、なんと必要だろうか。瞑想家や、芸術家や、聖者にとっての理想である内的な平静、また曇らない眼というものは、私たちにいかに望ましくて、そして私たちから遠いことだろうか
どれだけ少ないものでやっていけるかで、どれだけ多くでではない
凡ての先駆的な運動ではそうである通り、獲得したものの使い方は、後からくるものの課題に残された。
(中略)
私たちは自由な時間を得て、それで私たちの泉に水を漲らせる代りに、寧ろ泉を涸らしてしまうことのほうが多い
1日、或いは1ヶ月、或いは1年のうちの一部を私の子供たちの一人ひとりと二人だけで過せたら、と考える。そうすれば、子供たちももっと幸福で、丈夫になり、そして安心するから、結局はもっとしっかりしてくるのではないだろうか。
中年というのは、野心の貝殻や、各種の物質的な蓄積の貝殻や、自我の貝殻など、いろいろな貝殻を捨てる時期であるとも考えられる
浜辺中の美しい貝を凡て集めることはできない。少ししか集められなくて、そして少しのほうがもっと美しく見える。つめた貝は1つある方が、3つあるよりも印象に残る。空に月は1つしか輝いていない。

・・・以上です。


この本がきっかけで私は、当分行っていなかった海辺に自転車で散歩に行きました笑。まだ風が冷たい時期ですが、久しぶりに海にいくのも、いいものです。


おまけ
Gift from the Sea - Wikipedia
Anne Morrow Lindbergh - Wikipedia